「検察庁法改正」の論じ方

検察官と政治との距離はどうあるべきか
亀井 源太郎 プロフィール

後述のように、検察官の職務には独立性が要求される。したがって、仮に個別の検察官について定年や勤務の延長をすること自体は認めるとしても、それは、職務の独立性を脅かさないよう慎重に設計された制度の下で行われなければならない。

国家公務員法は国家公務員一般について規定しているものであって、検察官の特性に配慮して設計されているわけではない。

このため、個別の検察官について一定の理由から勤務延長することが原理的には不可能ではないとしても、国家公務員法の規定によるのは乱暴に過ぎたように思われてならない。

森まさこ法務大臣〔PHOTO〕Gettyimages
 

検察官の職務の独立性

検察官の職務の独立性が重要であることは、論を俟たない。

検察官は、時の政府や与党の有力者を捜査・訴追の対象とすることがある。このとき政治が捜査に介入することを許してしまえば、政府や与党の有力者を捜査し訴追することは著しく困難になってしまう。これでは、政府や与党にとって都合の悪い事件は闇に葬られてしまうこととなる。

このため、検察官の職務の独立性は重要である。

この独立性を担保するための方策は様々なものがあるが、たとえば法務大臣の指揮権に対する制限が著名であろう。

検察庁法14条は、本文で「法務大臣は、……検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。」と規定しつつ、但書きにおいて、「但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」と規定する。

法務大臣は、個々の事件については、検事総長のみを指揮できるが、その他の検察官に対して指揮することは許されない。検事総長が気骨と見識のある人物である限り、法務大臣からの不当な介入があったとしてもそれは現場に伝えられず、個々の事件に関する政治介入は失敗に終わる。

検察庁法は、このように、検察権の行使が政治によって不当にゆがめられることがないよう、検察官の職務の独立性を担保するしくみを置いているのである。