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今年から始まる大学入試改革で「日本のエリート劣化」が加速する可能性

では、どう変えればよいのか?

「爵位獲得レース」の大学入試

物江潤氏(1985年生まれ)は、早稲田大学理工学部卒業後、東北電力に入社した。2011年3月11日の東日本大震災の11日前に東北電力を退社し、松下政経塾に入る。評者は、松下政経塾で講師をつとめたことがあるが、物江氏も生徒の一人だった。誠実で課題に一生懸命取り組む姿が印象に残っている。

松下政経塾出身者は、政治家や経済人を志望する人が多いが、物江氏は、故郷の福島県に戻り、個別指導塾を開業した。物江氏は、大学教員になる能力が備わっているが、あえて塾という非公式な教育現場を選んだ。

塾で子どもたちと真剣に取り組むことをしなくては、日本社会は変わらないという想いを物江氏が強く持っているからと思う。

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物江氏は、在野の思想家・小室直樹氏の著作から強い影響を受けている。小室氏は、平等社会である日本では、出身大学がその人の属性を決めることになると考えた。大学に入ることによって「爵位」を得て、一代限りの貴族となるのだ。この爵位という切り口で、物江氏は著書の『だから、2020年大学入試改革は失敗する大学入試を分析する。

 

社会を維持するために階層は必要です。しかし、日本はどこからどう見ても無階級社会であるために、階層構成原理たる大学入試が必要になったわけです。別の言い方をすれば、大学入試で名声をもつエリートが決まるわけですから、小室博士の言葉を借りれば、大学入試が爵位獲得レースになったと言えます。

ここで強調しておきたいことは、この階層構成原理が、徐々に本来の役割を果たさなくなっていったということです。とくに、エリート階層の形成が上手くいきませんでした〉