平凡な日常だからこそ、どこよりも快適な場所に

私や、私たちにとってかけがえのない家族が住む家を、世界じゅうのどこよりも快適な場所にするのは、自分たちだ。

もしもあなたが、家族がともに語らい、憩うための居間がないのは、住んでいる家が狭いせいだと思うことがあったら、これからお話しするパリのアパートのことを思い出して欲しい。

エレベーターはないから、螺旋階段を上がらなくてはならない。息も切れ切れでドアの前にたち、鍵穴にキーを差し込む。ドアを開けるとそこに、キッチンスペースがあなたの目に飛び込んでくる。

右か左に小さな子供部屋があり、正面の窓からは隙間なく続くパリの建物群がみえる。部屋の真ん中に木製の6人がけのテーブルがある。手前に二脚、両脇に一脚ずつ椅子が置かれているが、窓寄りの部分はベッドが椅子の代わりをしているらしい。窓枠とベッドの間の白い壁には、インドシルクのいくつもの色ちがいのクッションが並んでいる。寝室兼サロンの窓に向かって、子供部屋とは反対にしつらえられているキッチンの小ささに、あなたは驚きの色を隠せない。

やがて、そこがあなたには、とてもパリらしい空間に思えてくるにちがいない。

そして次の瞬間あなたはきっと、ご自分の家のリフォームを決心する。

お気に入りのクッションひとつ置いたスペースでもいい。小さなマットを敷いてもいい。「ここが好き」な場所を、自分で、自分たちで作ればいい。そして、絶対作る。それがフランス人の考え方のようだ Photo by iStock
お金がなくても平気なフランス人、お金がなくても不安な日本人』日本が大好きだから、そしてフランスも大好きだから、そのいい所を思う存分真似したら、もっと幸せになるんじゃない? 底抜けに明るく優しく、かつ鋭い視点をもつ吉村葉子さんが20年間のフランス生活を振り返ってまとめたエッセイ集。考え方ひとつで不幸だと思っていたことも幸せになるし、人生は楽しくなる! その中から厳選したエッセイを特別に今後も限定公開予定。お楽しみに!