なんとしてでもスペースを
作り上げるパリっ子たち

横長の楕円形をしたパリの町は、東西12キロ、南北9キロだと知れば、市内なら交通費はいっさい使わないテクシー派も珍しいことではない。

「狭いながらも楽しいわが家」というのはわが国だけのことではなく、花のパリに住むパリっ子たちもまた、「狭いながらも楽しいわが家」で暮らしているのである。ところが広さというか狭さというか、似たり寄ったりの面積の住居でも、パリっ子と私たちでは家に対する意識に大きなちがいがある

家族が快適に暮らすという点で、狭いアパートに住む彼らは、天才的な才能を発揮するのである。それでは次に、パリっ子たちの住居観をお話ししよう。

はじめに居間ありきが、彼らの家作りのポリシーである。男性と女性でも、同性同士でも、カップルが住む場所の中心はサロンと呼ばれる居間になる。

家族がともに語らい、ともにくつろぐ。一日に学校であったことを子供たちは親に話す。異なった意見が飛び交い、議論に発展することもある。親が子供を躾けるのもそこなら、家族でテレビやビデオを観るのもそこだ。子供たちのお誕生日会をするのも、お客様をもてなすのも居間だ。ソファーでなく、テーブルと椅子が置かれている場合も、人が集う部屋が居間、つまりサロンになる。

人が集う空間がサロン。「居間という部屋」がなくても、「居間」を作る Photo by iStock

フランスなら夫婦と子供は絶対に別室だから、子供部屋として2Kから一部屋がつぶれる。残るはキッチンがついた一部屋だけということになる。その一部屋には当然、夫婦用のダブルベッドが置かれることになる。ところがインテリア部門の工夫で天才肌を発揮するパリッ子は、自分たちが寝ていない時間帯のベッドを、居間の一部にメタモルフォーズ。収納式ベッドなら昼間は壁になり、折りたたみ式ならそのままソファーにする。ベッドを厚地の布で覆ってテーブルを寄せ、長椅子にするパリっ子もいる。ムースと呼ばれる硬質の、折りたためるスポンジだけのベッドも便利だ。

なんとしてでも居間としてのスペースを、パリっ子たちは完璧なまでに作り上げてしまう。それもこれも、家族には、なにはなくても語らい、憩いの場所としての居間が必要だということが、彼らのDNAに刷り込まれているからである。