コロナ感染拡大による緊急事態宣言は徐々に解除の方向にある。しかしだからといって、まったく今までの通りということはありえない。新型コロナのある世界でどのように快適に暮らし、みなが心身ともに暮らしていけるかを考えていく必要がある。

それにしても、あらためて「こんなに自宅にいたことはない」という人は多いのではないだろうか。こんなに家族全員がずっと一緒にいたことはない、という人も。そう考えた時に大切なのは「居る空間」を快適にすることではないだろうか。

そりゃあくつろげるスペースが欲しいけど、うちは狭いから……そう思う人も多いだろう。それは実はフランス・パリでも同じである。それでも、フランス人の考え方は「狭いから無理」ではどうやらないらしい。エッセイストの吉村葉子さんのベストセラー『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』シリーズの『激しく家庭的なフランス人、愛し足りない日本人』より、狭いアパートの多いフランス人の知恵をお届けする。

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あなたにとって居心地のいい場所は?

あなたにとって、もっとも居心地のいい場所はどこですか?

あなたの家の近くにオープンした、パリの町角にいるような気分にさせてくれるカフェのテラスとか、公園を眺めながらお茶が飲める郊外の喫茶店だとか、夏休みに宿泊した都内のホテルの部屋を、あなたは思い浮かべているのではないだろうか。だが、そこはあなたの好きな場所であって、あなたが全身を投げ出してくつろげる、居心地のいい場所は別にあるはずだ。

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もしこの問いを、フランセーズ(フランス女性。ちなみに男性はフランセ)に発したら、彼女たちはすかさずこう答えるにちがいない、もっとも居心地のいい場所は、私の家のサロンより他にあるはずないじゃないと。サロンというとリッチなマダムが仕切る、シャンデリアが輝く、貴族たちが集う大きな応接間を連想するかもしれないが、それは18世紀か、せいぜい19世紀末から第一次世界大戦までのベル・エポックといわれる古きよき時代のフランスでのこと。「サロン(salon)」という言葉で仏和辞典を引くと、そうした社交界という意味も載っているが、現代社会で日常生活で使われるサロンといえば、居間のことである。

またしてもあなたに、私の家には居間なんかないといわれてしまいそうだが、夫婦に子供がいても、パリっ子なら、2Kのアパートにもサロンを作ってしまうのである。

あなたや、夫や、自分の命と引き換えにしてもいいと思うほど大切な子供たちが、疲れたからだに休息と、心にやすらぎを与えてくれる癒しの場所が家庭だという点は、万国共通のはずだ。あなたが独身だとしても、その点にちがいはない。そしてそれは今、家族が毎朝、毎晩キッチンに立っているあなたの家だし、家族が語りあい、心身ともに癒されるための場所としての居間である。

だからあなたの家の居間を、今よりももっと居心地のいい場所にしようではないか。