──Cas3は、知財の問題も明確にクリアした日本発の技術として広がりそうですね。
そうなってくれることを願っています。Cas3で一人でも多くの人を救うこと、これが私の重要な使命と心得ています。
一方でCas3の可能性を徹底的に掘り下げてみたい。動物を使ったゲノム編集により、いわゆる「ヒト化動物」、つまり遺伝子や細胞・組織の一部を人間のものに置き換えたヒトの疾患モデルとなる実験用の動物を作りたい。これが究極の夢です。実現すれば、医療を飛躍的に進歩させることにつながるはずです。
──研究ひとすじで歩んできた人生を振り返ってみて、いちばん大切なことは何でしょうか。
やはり知的好奇心に尽きると思います。これがあるから研究を続けたいと思う。もちろん簡単にできることではないけれども、何かを発見したときの喜びは、筆舌に尽くしがたいものがあります。この喜びを味わうために研究に打ち込んでいるのです。
──好きなことに打ち込めるのは、幸せな職種ですね。
研究に興味のある人は、ぜひ研究者を目指してほしい。博士の待遇を政府が見直すというニュースを、つい最近見かけました。
学位を取ることとは、自分で研究を考えて組み立てる能力のあることを意味します。ものごとを俯瞰的に見つめて、全体像を把握しないと研究はできません。そうした能力を身につけるのが、博士課程だと思います。その力は他の分野でも応用が効きます。
──先生がベンチャー起業されたのも、その一例だと。
博士たちの活躍の場としても、ベンチャー企業が果たす役割は大きいと思います。実際に、学位をとって起業する若い研究者たちも増えているようです。博士号を持つ人たちが活躍できる場、そのモデルにC4Uがなるよう頑張っていきたいと思っています。