「給付金10万円をギャンブルで使われる!」依存症者の妻たちの悲鳴

さらに借金を作る可能性もある…
田中 紀子 プロフィール

また、別居して転出届を出したとあるが、これはギャン妻や子供たちが新居に移ったケースと、ギャンブル依存症の夫が出ていって転出届を出したケースが考えられる。同居していたのでは「家庭内オレオレ詐欺」や「家庭内窃盗」が止まらないギャンブル依存症の夫に嫌気がさし、これを機に別居を選択したケースが考えられる。

この「別居」という選択肢は、ギャンブル依存症の家族ではよくあるパターンで、私たちもお勧めしている。別居により夫が金銭的に底をつき「回復するしかない」と気づき、自助グループ、病院、回復施設に繋がるケースや、逆に常に緊張にさらされた家庭内から開放されギャン妻が自立し離婚に至るケースもある。別居はお互いを冷静に見つめる良い機会となるだけでなく、夫と共倒れするより、妻子だけでも安全な家庭生活を営めることは大きなメリットである。

ギャン妻たちはそれまでに信じられないくらいの経済的、精神的苦難を乗り越えてきている。数年に1回、短ければ年に1回とか半年に1回、数百万単位の借金が発覚し、気がつけば貯金はおろか子供の学資保険まで使いこまれていたというケースは我々ギャン妻たちのほとんど鉄板ネタである。

さらに度々「財布を落とした」という嘘をつかれ、家の中のブランド物や電化製品、貴金属、時には結婚指輪まで売り飛ばされる。中には、大掃除に物置を片付けていたら、掛け軸から、食器から何から何まで空箱だけが置いてあり中味は売り払われていたという話しもある。

その上ある日突然、夫の友人や会社の同僚から「お金を返してくれない」と電話がかかってきたり、闇金から「てめぇの旦那に金貸してるんだよ!」と携帯に職場に、実家の両親に、時には隣近所にまで電話がかけられ脅されるのである。そして最悪の場合は上司から突然電話で「ご主人が会社のお金を使い込んだ」とか、警察から窃盗や万引きで捕まったと連絡が来るのである。

こんな暮らしで、ギャン妻のメンタルがおかしくなるのは当然であり、その影響は子供にも及ぶ。共依存に陥ったギャン妻は、それでも「この人を何とかしなくては……」と執着してしまうのだが、家族の自助グループや家族会に繋がることで、段々「自分を大事にしよう」と思えるようになり、子供と自分の安全を最優先しようと別居を決意できるようになる。

しかしこのような心境にそう簡単にたどり着けるわけではなく、ダメージが大きすぎて自信を失いどうしても逃げられない人や、自分や子供に障害があったり、親の介護などで家から離れられない人もいる。

 

そういうギャン妻たちが「経済的DV」と訴えて、行政に相談しても、行政によって対応の違いはあるのだろうが、ほとんどの場合何もしてくれない。一度、お金に余裕のないギャン妻が逃げることを決意したので、シェルターに避難できないかと思い行政に付き添ったことがあるが、経済的DVでは相手にされず、シェルターも利用させて貰えなかった。その時「では、殴られなければ助けて貰えないんですね?」と聞いたら、「言いにくいけどそういうことです」と返され、あっけにとられたことがある。

このように支援の手も少なく、考えられないような行動をしてしまうギャンブル依存症者に、特定給付金の請求権が与えられているのである。これでは本当に困っているギャン妻や子供達に届かないばかりか、夫のギャンブルに歯止めが効かなくなりますます借金を作ってくる可能性すらあるのである。