旅作家・歩りえこさんによるFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)では、歩さんの著書『ブラを捨て旅に出よう』で語られていない、世界94カ国で出会った印象的な男性について綴っています。

前回の記事では、約8年前にミャンマーを訪れた際、婚約者がいる現地の男性を勘違いさせてしまった歩さんの行動をお伝えしました。今回は、「バングラデシュ」の貧富の差をなくすために活動している男性、その部下である超ピュアな男性とのエピソードをお届けします

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現地到着前の奇遇で奇妙な出会い

インドに隣接した国「バングラデシュ」は“黄金のベンガル”と呼ばれている。水と緑が美しく、大河が流れる国。この国を訪れようと思った理由はバングラデシュで結婚した友人を訪ねるためだ。

女優・グラドルとして活動していたMちゃんとは20代の頃、映画やトークライブなどでよく一緒に仕事をした。可愛らしい外見と、他人に対して気配りを忘れない天使みたいな優しい性格の女性だ。

でも、Mちゃんはいつも家賃や生活費の心配をしているような、お金に関して結構苦労している印象だった。「大丈夫!Mちゃん可愛くて性格いいし、きっと玉の輿に乗って悠々自適な生活を送れるようになるよ!」と仕事現場で私は冗談っぽくMちゃんに言った。

それから暫く経ち、バングラデシュで突然結婚したと知ったときは本当に驚いた。「バングラデシュ人とどこで出会うの?Mちゃん、生活は大丈夫かな?」と、思わず要らぬ心配をしてしまう。聞けば、現地人ではなくバングラデシュに住む日本人と結婚したという。

結婚式には皆んな鮮やかなサリーを着て参列します。写真提供/歩りえこ

快適な日本を出て、生活の基盤がまるで違うバングラデシュで暮らすことを選択するなんてとても勇気がいる。その男性を心底愛しているからこそできることだ。玉の輿なんて話を冗談でもしていた若かりし頃の自分が本当に恥ずかしい。そう、Mちゃんは私利私欲など考えない本当の天使だった。

当時世界中を周っていた私は未知の国にも行ってみたかったし、久しぶりにMちゃんに会いたい。

早速航空券を買い、ビザを取得して香港経由で首都ダッカに向かう便に乗り込むと、たまたま隣が日本人男性だった。ほぼバングラデシュ人と中国人しかいないのに日本人同士で並ぶなんて奇遇だ

彼の座席ポケットに入った2冊の本が目に飛び込んでくる。一冊は『文藝春秋』で、もう一冊には『社会を変える』という言葉が書かれてあった。これはまた凄い男の隣になってしまった。日本社会を変えたいのか、バングラデシュ社会を変えたいのかは分からないが、この男は本気だ。社会を変えることに興味のない者がこんな本気の本を買うはずがない。

社会を変える類の議論に発展するとリラックスできないので日本人と悟られたくない。でも、私の座席ポケットには“バングラデシュ”と日本語で大きく書かれた『地球の歩き方』があり、自然と会話が始まってしまった

社会を変えたい男は東大卒業後に財務省に入省。アメリカ一流大学院で修士号を取得と絵に描いたような超エリート人生。この男、天才かつ本気だ。私とは異次元レベルの壮大な大志を抱いている。

しばらく、天才男と話をしていたが、あまりに高度過ぎるので機内で寝ることにした。爆睡しているうちにダッカへと到着!

おめかししたバングラデシュの女の子は目鼻立ちくっきり。写真提供/歩りえこ