「ステイホーム」「お家にいましょう」がスローガンになって、渋谷のスクランブル交差点や浅草の雷門はすっかり閑散としたのに、スーパーマーケットや商店街、それから公園や遊歩道などにはふだん以上に人が溢れている。
何度も繰り返されたニュース映像だが、何が起きているのかわからない人が多く、いけないと言われているのになぜこんな人出が、と困惑気味のレポーターもいた。
東京都知事はこわい顔でスーパーの入場規制を打ち出した。大阪市長は「女性の買物は時間がかかるから」と嘲るようなコメントをした。
しかし、考えてもみれば、ふだんは学校や職場に行っていた子どもや大人が今はみんな家にいる。給食や社食で食べていたランチを家で食べる。飲食店もガラガラなので、いつもは店を埋めていた人たちも家で食べている。
これだけ膨大な食の需要が行き場を失い、土石流のように家に押し寄せてきた。家族がそれだけの量の食材を買いに出なければならなくなったのだから、スーパーマーケットや商店街が混雑するのは当然だ。それに困惑した首長も報道陣も、「ホーム」の中で何が起きているのかについての想像力が欠けていた。
学校が一斉休校になり、在宅勤務が推奨されて、子どもも大人も「お家」に帰ってきた。食事だけではなく、在宅勤務になった分の仕事も、休校になった分の教育も、みんな家に流れ込んできた。自宅療養の「軽症者」もPCR検査待ちの発熱者も自己隔離の濃厚接触者も家にいる。
なんでも「お家」に押し込んでおけば大丈夫という「対策」なのかわからない「対策」が続いてきたが、呑み込んだ課題は結局のところ家族が背負う。
一人暮らしで自宅療養の「軽症者」が亡くなり、また家族への感染が相次ぎ、家族任せの仕組みは回らないことが誰の目にも明らかになった。
病人がいなくても、「ステイホーム」により激化したひとり親家庭の窮状やDVの増加が報道されるようになったが、それも氷山の一角に過ぎず、多くの家族が大変なことになっているのではないだろうか。
「ステイホーム」の実態調査をしよう、と思い立ったのは、この心配からである。