ひとりでしにたい』――カレー沢薫さんとドネリー美咲さんによる、こんなパンチの効いたタイトルの漫画がある。とてつもなく簡単に言うと、婚活より終活を考える物語だ。主人公は35歳の山口鳴海。彼氏ナシ、独身。慕っていた独身の伯母が孤独死し、衝撃的な姿で見つかったことから、「婚活しよう」と考え始めることから物語は始まる。しかし冷静な(実はその冷静さには裏があるが)同僚男性・ナスダに「結婚=安定ってありえませんよ」「結婚したらひとりで死なないのか」という、と現実を突きつけられるのだ。

編集者から送りつけられたときは絶句したが…

そんな鳴海はアイドルに夢中だし、自分で購入したマンションに愛する猫と暮らし、実はなかなか愉快に暮らしている。ここにあるのは結婚の否定でも肯定でもない。結局愉快に生き・死ぬには、自分が自分で人生を楽しむしかない。そんなことも教えてくれる作品なのだ。

この作品に「わかる、わかるよ」と言ったのがライターの長谷川あやさん。前回はオタ活がいかに人生を愉快にするかについて愛情たっぷりに綴ってもらったが、今回は「ペット」にクローズアップしてお届けする。

「ひとり暮らしの希望の太陽」と語る
アラフォー女子にビリビリ

30を過ぎた頃だったろうか。友人らに犬や猫を飼う人が増えだしても、私はそれほど興味がなかった。動物は好きだけど、手もお金もかかりそうだ。出張が多い仕事柄、ひとりで家に置いておくのもしのびない。宿泊を伴う出張のたびにペットホテルを利用するのも費用がかさむ。そもそも賃貸のマンションはペット不可の物件が多く、物理的に犬を飼うことが難しかった。ちなみに猫アレルギーのため、猫という選択肢は最初からなかった。

しかし、もはや今は愛犬のいない生活は考えられなくなっている。

カレー沢薫さんの漫画『ひとりでしにたい』の主人公の鳴海には、年齢は違えど、シンパシーを感じる点がいくつもある。そのひとつが、趣味に生きがいを見出しているということ。楽しく生きるために、夢中になれる趣味はあったほうがいいと私は思う。これについては、前回、うっとおしいくらいに思いのたけを存分に書かせてもらった。そして、もうひとつがペットを神とあがめている点だ。鳴海はマンションを購入し、魯山人という猫を飼い始めた。本の冒頭の登場人物紹介には、魯山人について、「ひとり暮らしの希望の太陽」と書かれている。

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わかる、わかりますとも。今は老母と住む私はひとり暮らしではないが、マンションを購入し、飼い始めた犬は、「希望の太陽」であり、そして、「神」だ

朝、目を閉じたまま手を伸ばす。近くで寝ているはずの毛むくじゃらの愛犬の体温に触れると、この仔がいてくれてよかったと体中から歓びがあふれてくる。鳴海は、帰宅するたび猫を神だと見間違えるそうだが、よくわかる。私と母は大げさではなく、毎日、「かわいい」「こんなかわいい仔がうちに来てくれて私たちはなんてラッキーなんだ」と、犬を抱きしめる。至って真面目だ。かわいすぎて、口に出さずにはいられない。同時に、うちの犬は容姿的にはそれほど優れていないこと、この仔でなくても、うちに来た犬はどんな犬でも世界でいちばんかわいい存在になったであろうということも承知している。