安倍首相「人生の出口戦略」はコロナですべて吹き飛んだ

安倍に直訴した3人の議員たち【前編】
戸坂 弘毅

党員投票が行われるフルスペックの自民党総裁選では、地方の党員票に強い石破が当選する可能性が出てくる。

それを避けるため、今年9月に東京五輪・パラリンピックが終了した後、2021年9月の総裁任期切れまでのどこかで途中辞任し、両院議員総会での総裁選出で岸田総裁を実現する。これが今年1月時点での「安倍シナリオ」だった。地方票が限定される臨時の総裁選であれば、国会議員の間では極めて不人気である石破が、新総裁に選出される可能性は低い。

2018年総裁選での石破茂(Photo by gettyimages)
 

側近も諦めていた

付言すれば、一時は有力視されていた「東京五輪・パラリンピックを花道に、終了直後の今年9月に退陣」との選択肢は、年初の時点ですでに安倍の念頭からは消えていた。

それは、「少しでも多くレガシーを」と考える安倍が、「全世代型社会保障改革」の一環として、後期高齢者にも医療費の2割負担を求める法案を秋の臨時国会で成立させ、「将来にわたって日本の医療制度を維持するための改革を成し遂げた」と誇れる実績を残したいと考えるようになったからだ。

安倍は若い時、自民党の社会部会長(現・厚労部会長)を務めたことを自らの経歴書に必ず書き入れる。医療や年金制度などに詳しいとの自負が強いこともあって、この改革に拘っているのだ。

もはや任期中に衆院解散を打つつもりもない。最後に、国民に不人気なこの法案を成立させて、ささやかながらレガシーを残したい。そのため、退任は法案成立後の今年11月から来年夏までの間で考えていた。自らの居場所を確保するために安倍政権の継続を望む今井ら側近たちも、安倍自身の口から4選を強く否定する言葉を繰り返し聞かされ、もはや諦めていた。