安倍首相「人生の出口戦略」はコロナですべて吹き飛んだ

安倍に直訴した3人の議員たち【前編】
戸坂 弘毅

「日ロ平和条約の締結」という外交的悲願も、プーチンに翻弄されるばかりで見通しは全く立たない。昨秋、水面下でプーチンから「平和条約交渉を仕切り直そう」とのメッセージが届いた時、安倍は「もうあんな厳しい交渉はやりたくない」と一度は消極的な姿勢を示した。気力も失われているのだ。

さらにコア支持層も期待する「拉致問題の解決」と「日朝国交正常化」という目標に至っては、すべてはトランプ・金正恩による米朝協議の進展次第という有様で、自力では手掛かりすら得られる見込みはなくなった。

 

都合のいいシナリオ

安倍の通算首相在任期間は、すでに憲政史上最長となっており、今年8月には大叔父である元首相・佐藤栄作の連続在任記録2798日をも上回る。

「日本の憲政史上、最も長く首相を務めた」ことだけをレガシーに余力を残して退任し、その後は、すでに実質的な安倍派である最大派閥・細田派=清和政策研究会の会長ポストに座る。そして、責任のない気楽な立場で政権への影響力を維持しながら、10年余は政治家としての「余生」を楽しみたい――安倍の頭の中には、そんな都合の良いシナリオがあった。

そのためには、安倍の政権運営を厳しく批判してきた元幹事長の石破茂が、自分の後継になることだけは避けなければならない。「石破総裁」を阻止し、若い時からの遊び仲間で気心が知れている政調会長の岸田文雄を後継に据えれば、しばらくは「院政」を敷くことができる――そう考えてきた。

岸田文雄(Photo by gettyimages)