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CAに防護服を縫わせるこの国で、『コンビニ人間』が問うもの

ジェンダークィアで村田沙耶香を読む

女性と縫い物

4月の頭、航空便の運休で通常業務のできないANAの客室乗務員(CA)が防護服の縫製支援というニュースに、「時代錯誤」「性差別的」という批判が噴出したが、今度はマスク。JALの地上旅客係員(GS)が、飛行機絵柄のマスクを縫って、子どもに配付したという。

通常の業務が出来ない時に、臨時に他の仕事をするということはあり得るだろうが、どうしてその仕事が「縫製」なのか。そしてまた、どうして縫えると思われているのか。CAやGSが女性だからという以外の理由を思いつけない。

女性と縫い物。あまりにも古いジェンダー観である。そもそもCAもGSも海外では男性が従事していることが全く珍しくないのに、日本ではほとんどが女性である。未だ圧倒的少数のJALやANAの男性CAやGSは、ミシンの前に座ったのだろうか。

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縫われたマスクは、支援というより美談をつくる狙いでなされたのだろう。これが美談になると考えられていること自体が、日本のジェンダー不平等に対する感覚の鈍さを示している。世界はどんどん変化しているので、日本のジェンダー・ギャップ指数は下がる一方である(今年は153カ国中121位)。このままでよいわけはない。

ジェンダーがつくり出す問題に、根本から向き合っている作家に、村田沙耶香がいる。

村田沙耶香は、日本の中だけでなくグローバルに読まれる日本の現代文学として、近年注目を集めてきた作家だ。2016年に芥川賞を受賞した『コンビニ人間』は、日本での発行部数はすでに150万部を超え、翻訳もすでに30カ国でなされている。数ある翻訳のなかでも、2018年に刊行されたGinny Tapley Takemoriの翻訳による英語版『Convinience Store Woman』は、『コンビニ人間』を日本から世界に押し出す役割を果たした。