新型コロナ、安倍政権と専門家会議の「いびつな関係」

独立性・公開性が保たれていない…
春日 匠 プロフィール

例えば、「明確な役割と責任」についてであるが、日本の専門家会議は「新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行うため」と規定されている。しかし、実際は「医学的」に限られず、社会制度全体について意見を求められているし、その「助言」が政策に対してどの程度の影響力を持つのかが不明確なため、政策に対して過度な責任を負わされている

都合の悪い助言は無視する一方、見通しが示せない時だけ「専門家の意見をよく聞いて決定したい」と言い抜けるのは政治家がよく使う手段だが、それが多用できるのは、責任規定の曖昧さも一因である。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

専門家会議に「独立性」はあるか

さらに、日本の新型コロナウィルス感染症に関する専門家会議については、独立性について大きな疑義がある。

例えば、メンバーである押谷仁教授(東北大)は、3月22日(日)に放送されたNHK スペシャルで次のように述べ、PCR検査を行わないことには科学的な意義があると主張していた。

実はこのウイルスでは、80%の人は誰にも感染させていません。つまりすべての感染者を見つけなければいけない、というわけではないんです。クラスターさえ見つけられていれば、ある程度制御ができる。むしろすべての人がPCR検査を受けることになると、医療機関に多くの人が殺到して、そこで感染が広がってしまうという懸念があって、PCR検査を抑えていることが日本が踏みとどまっている大きな理由なんだ、というふうに考えられます。

ところが、4月11日(土)に放送されたNHK スペシャルでは、次のような議論になっている(カギカッコ内が押谷教授の発言であることに注意する必要があるが、基本的に前段も押谷氏の認識を説明していると考えて良いだろう)。

見えないまま感染を広げるウイルスに、どう対応すればいいのか。

中国が行った戦略は都市を丸ごと封鎖し、人の外出・接触を制限すること。しかし日本では強制的に実行する法律上の仕組みはない。もう一つ考えられる戦略はPCR検査の徹底。しかし日本では検査体制は十分に整備されておらず、直ちにPCR検査の数を増やすことは困難だった。さらに盤石とは言えない医療体制への不安。

「日本の選択肢を考えた時に、中国のようにできないし、シンガポールのようにできないし。そうすると、このウイルスのどこかにある弱点をついて対策を考えざるを得ない」(押谷さん)

つまり、3月22日の回では「手段として必要十分だから」PCR検査件数を抑えたクラスター対策が必要だと述べているのに対して、4月11日の回では「他国と同等の、より良い手段をとるためには(PCR検査は徹底されるべきだったが)日本の能力が足らないため、仕方なくクラスター対策に集中したのだ、という議論になっている。これは、誠実な、透明性と公開性のある議論とは言い難い。その原因は、独立性の問題だろう。

Buzzfeedのインタビューで西浦博教授(北海道大学)が述べているが、専門家会議と行政は、何をどう発表するかで揉めることが多々あったようである。

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