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新型コロナウイルスと「デジタルで闘う」科学者たち

実験科学だけが科学じゃない!
新型コロナウイルスの感染が確認された人数が、世界で400万人を突破し、その勢いはとどまるところを知らない。

燎原の火のごとく広がる新型ウイルスに立ち向かうべく、世界中の科学者たちがコロナ対策に関連する研究を次々に発表している。中でも注目すべきは、実験を行うことなく、データ分析を通じて新しい知見を発表するデータサイエンティストたちだ。

『生命はデジタルでできている』の著者で、バイオインフォマティクスの旗手として知られる、田口善弘さんが、新しい生命科学の潮流を解説する。

厳しい状況に立ち向かう人々

世は猫も杓子も新型コロナウィルスである。

世界的に見れば日本では死者も決して多くはなく、しかも、ほぼご高齢の方々に限られている(ご冥福をお祈りします)ので、比較的平穏な感じがある。しかし、死者が千人代の後半から、万人越えになってしまった欧米各国はさぞかし阿鼻叫喚の有様だろう。

日本でも、当事者ご本人になんの咎もないにもかかわらず、観光業や外食産業などは、業態としてもはや立ち行かないような状況になってしまい、「人間、生きてさえいればなんとかなる」という言葉が虚しく聞こえるような有様で本当に心が痛い。医療崩壊の瀬戸際で戦っておられる関係者の皆様はいわずもがな。

【写真】医療現場では戦いが続く
  医療現場の最前線では、関係者の戦いが続いている Photo by Getty Images

こういう時に僕らみたいな研究者というのは、あまり役に立たないので歯がゆいことこの上ない。

研究者は、新型コロナとどう戦うか

それでも、世界中の研究者は結構、頑張っている。通常、僕らの研究成果は、査読という名前の審査を経て論文という形で公開されるのだが、最近はプレプリントという「審査前の仮原稿」をインターネット上で公開して情報交換するのが流行りつつあった。

【写真】プレプリントのネット上公開が進んだ
  プレプリントのネット上での公開が進んだ Photo by Getty Images

まあ、まともな研究者なら、査読を経ていなくても、だいたいはドンデモかどうかの区別はつくし、この状況だから、審査を経て公になるまでコロナウィルス関係の情報交換を待っているわけにはいかない。

そういうわけで、一気にプレプリントでの情報交換がメジャーになった。世界中でそれこそ数えきれないほどの新型コロナウィルスについてのプレプリントが毎日の様に刊行されている。

しかし、プレプリントの論文の公開が盛んになるにつれて、新たな変化が現れてきた。