5月6日を期限としていた緊急事態宣言が5月いっぱいにまで延長され、コロナ禍は依然として収束の気配を見せない。そんな「国難」のどさくさに紛れてとんでもない法案が審議入りしようとしている。「種苗法改正」である。
先日、女優の柴咲コウさんがツイッターで種苗法改正を問題視する投稿をしたことも話題になった。その後、柴咲さんは「(法改正を)知らない人が多いことに危惧している」と綴った。問題の法案の中身とは。
種苗法改正案は、実は3月3日に閣議決定されている。コロナ問題の対応に追われる中、なかなか審議入りできずにいたのだ。ところがここにきて、緊急事態宣言真っ只中にもかかわらず、今週にも審議入りする可能性が浮上しているという。
農水省は改正の主な理由について「国内優良品種の海外流出を防ぐため」としている。しかし、「法改正の本当の狙いは自家増殖の禁止だ」と語気を強めるのは、元農水大臣の山田正彦氏だ。
「自家増殖」とは、農家が収穫物の一部を次期作の種苗に用いることをいう。そうすることで、毎年新たに種子を購入することなく営農していけるのだ。
自家増殖が禁止されると、種子の使用に際して許諾料を支払うか、毎年新たに種子を購入する必要が生じる。そうなれば、農家経営を圧迫することは間違いない。その上、一部の大企業が種子の権利を握るようになり、種苗の値段が上がっていくことも懸念される。
「農水省はシャインマスカットの種子が海外に流出した例を挙げて、流出を防ぐためには種苗法の改正が必要だと主張しています。しかし、いくら国内法を変えたところで海外への流出を止めることはできません。そのためには、それぞれの国で品種登録をしていくことや、刑事告訴するなどの別の対応が必要です」(山田氏)