コロナ薬「アビガンの安全性・効果のデータはそろっている」は本当か

治験が必要である理由
原田 隆之 プロフィール

アビガンの効果

現時点では、アビガンについては複数の観察研究と1件のRCTしかない。観察研究では、効果がありそうだという結果が出されていても、それがアビガンの効果なのか、他の交絡要因の効果なのかが判然としない。1件のRCTについては、中国で少数の患者を対象として、アビガンと別のインフルエンザ薬を比較したものであるが、両者に有意な差はないという結果であった。

これだけ見ると、現時点では、山中教授の言うように、「効果のデータがそろっている」というのは正しくないことがわかる。しかも、安全性のデータについては、ある程度長期間の追跡調査をしないとわからない部分も大きい、アビガンについては、動物実験で催奇形性の報告がある。安全性のデータがそろっているとも到底言えない状況である。

〔PHOTO〕gettyimages
 

レムデシビルに関しては、アメリカでの臨床研究(治験)があり、中国で小規模な臨床研究が1件あるだけの(しかも効果があいまい)アビガンとは、状況がまったく異なっている。アビガンが効かないというのではなく、現時点では「わからない」のだ。

新型コロナウイルス感染症について、一刻も早いワクチンや治療薬の開発が待たれることは言うまでもない。その思いは皆同じである。しかし、それを待ち望むあまり、エビデンスを軽視することの愚は何としても避けなければならない。

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