コロナ薬「アビガンの安全性・効果のデータはそろっている」は本当か

治験が必要である理由
原田 隆之 プロフィール

ランダム化比較試験

薬の有効性の評価をするために観察研究が不適切だとすると、どのような研究をすべきだろうか。一般に、薬の治験で用いる研究デザインは、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial: RCT)と呼ばれるものである。

これは、患者をランダムに2つの群に分け、一方に薬を投与し、もう一方には偽薬(プラセボ)を投与する。この場合、患者にはどちらが実薬で、どちらが偽薬であるかわからないようになっている。そして、服薬後の症状の変化を観察するのである。

薬の治験だけでなく、あらゆる介入の効果を検討するためには、このようなRCTが必須であり、評価研究のゴールドスタンダードとされている。ここでは、実際に薬を飲む「介入あり」の介入群と、偽薬を飲む「介入なし」の対照群の比較をする。そして、介入群の介入後の症状が、対照群と比べて有意に改善されていたら、薬の効果ありと判定するわけである。

ここで、観察研究のところで述べたように、この研究でも当然、患者にはさまざまなことが同時に起こっている。共介入、プラセボ効果、ホーソン効果、時間経過などである。

しかし、ランダムに2つの群に分けたのであるから、これらのことはどちらの群にも同じように起こっているはずである。2群の間での唯一の違いは、その薬を飲んだか飲んだか否かという点のみである。したがって、その後に症状の変化が見られたら、それは介入の差(薬を飲んだか否か)によると相当な確信をもって言うことができるのである。

つまり、ランダムに分けた2つの群の比較をするだけで、交絡の影響が排除され、介入の影響だけを見ることができるようになる。

 

このとき、対照群の患者に偽薬を飲ませるのは、非倫理的ではないかという意見もあるかもしれない。しかし、研究の時点では、実薬には効果があるかどうかわかっていない。もしかすると副作用もあるかもしれない。何もわかっていないから治験をするわけである。したがって、この時点ではどちらの群の患者が「得」で「損」かという点で公平であるといえる。

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