コロナ薬「アビガンの安全性・効果のデータはそろっている」は本当か

治験が必要である理由
原田 隆之 プロフィール

ところが、患者さんには、介入前後に同時に他の多くのことが起こっている。この薬を飲む前に、別の薬を飲んでいたかもしれない(これを「共介入」と呼ぶ)。当然、食事もしているし、医師や看護師などの献身的な励ましも受けているだろう。

さらに、プラセボ効果ホーソン効果という現象も無視できない。プラセボ効果とは、「鰯の頭も信心から」という言葉があるとおり、薬に期待しているとその期待自体が心理的な効果を及ぼして、症状が改善するというものである。ホーソン効果とは、観察されているという意識が影響して、症状に変化をもたらす現象である。

加えて、介入前と介入後では、それなりの時間が経過しているから、時間経過による変化(自然治癒)の影響も無視できない。

これを図示すると、以下のようになる。まず単純に考えると、アビガン投与後に症状が改善したならが、そこに因果関係を求めてしまう。

しかし、患者にはアビガン投与のほかにも同時に様々なことが生じており、もしかするとそれらが単独で、または相互に影響し合って、症状改善に影響をもたらしているかもしれないのだ。

 

観察研究というのは、目立った2つのこと(アビガンと症状変化)にしか着目しないので、他の諸々の影響(これを交絡と呼ぶ)が排除できない。つまり、本当は他の要因が影響して症状改善をもたらしているのに、誤ってアビガンが効いたという結論を下してしまう恐れが大きいのである。このような理由から、観察研究は、薬の効果を検討する際には、不適切な研究デザインだとされている。

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