読書会「猫町倶楽部」に続々と人が集まるワケ

みんなで読む、その醍醐味
佐藤 優 プロフィール

読書会は「開かれた知の場」

主宰者が誰になるかによって読書会の性格も異なってくる。

読書会コミュニティの運営には時間も手間もかかり、それでいて儲からないのです。そんなことをわざわざやっているわけですから、自分のモチベーションが下がりさえすればすぐにやめたくなってしまいます

それを何とか回避し、ずっと続けていくためにも、やりたくないことはやらない、やりたいことをとことんやる、これを貫くことで、モチベーションを下げないようにしています

主宰者が「独裁的」に読書会を運営するということは、裏返して言うと、全責任を主宰者が負うということだ。主宰者と波長が合わない場合、メンバーはそこから出ていって、別の読書会に参加すればいい。あるいは自分で読書会を立ち上げることもできる。

無理に組織を維持しようとすると読書会は、カルトに近いような形になってしまう。読書会を開かれた知の場とするために山本氏は細心の配慮を払っていることが本書の行間から伝わってくる。山本氏は、読書会という形でグループで本を読むことの意義についてこう述べる。

 

〈では、これら一連の学びは何のためにあるのでしょうか。それはもとを正せば、生きるためにほかなりません。生活の中で実践してこそ、学びはようやく血の通ったものとなるのです。

読書と読書会、そして猫町倶楽部のコミュニティで、決してハリボテではない、強固な自信を取り戻す。その上で、もともといた自分の世界をもう一度見つめ直してみると、きっとそれまでとは多少なりとも違って見えるはずです。

今まで、何一ついいことがないと思っていた日常の中にも、実は思わぬ楽しみが見つけられるかもしれません。嫌なやつばっかりだなんて思っていた身の回りの人たちに、思わぬ長所が見つかるかもしれません。

あるいは、やっぱりここは自分の居場所ではなかったと、腹を決めて新天地に旅立つことになるかもしれません。それだっていいんです。自分にもこんなことができるんだと、自分自身をも見直すきっかけになるはずです〉

読書は孤独な営みではない。テキストを通じて著者とコミュニケーションを取ることだ。猫町倶楽部では、文学、哲学、ノンフィクションなどさまざまな分野の本を取り上げているが、いずれも複数の読み解きが可能な優れたテキストだ。

同じ本を読んでも、解釈は読者の数だけある。その差異を楽しむことができるのが読書会の醍醐味と思う。

『週刊現代』2020年5月2日・9日号より