読書会「猫町倶楽部」に続々と人が集まるワケ

みんなで読む、その醍醐味
佐藤 優 プロフィール

自己啓発にならないために

猫町倶楽部では長編小説を課題図書に取り上げることもある。

〈過去には、『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫)を取り上げたこともありました。ロシア文学者である亀山郁夫さんの翻訳されたこのシリーズは、全5巻とかなりのボリュームがあります。

読書家を自負する方でも、もしかすると読んだことがないか、もしくは買ったは良いが積ん読(部屋の片隅に本を積み上げて読まないこと)状態、という人も少なくないかもしれません。それくらい、読むのに体力を要する本です。

けれども参加者のみなさんは当然、全員が読了してきてくれます。ちなみにこのときの読書会、参加者は名古屋で約100名、東京では約80名でした。本が売れない、若者が本を読まないなどとあちこちで言われるこの時代に、こんなにたくさんの人が『カラマーゾフの兄弟』を読み終えて、集まるんです〉。

積ん読状態の古典を読むために、読書会は最適の場だ。読書会を長く続ける秘訣について山本氏はこう述べる。

 

猫町倶楽部を運営する上で、一つ絶対に譲れないことがあります。それは、何をやるにもあくまで「私がやりたいことをやる」、そして「私がやりたくないことはやらない」ということです。

私は、生活のおよそ6割程度を猫町倶楽部の運営のために費やし、本業のリフォーム屋は残り4割の部分で営んでいます。平日もイベントの準備や調整、休日はほとんど読書会です。しかし猫町倶楽部の運営を通じて私が得ている収入は、現状、一切ありません。完全に無償労働なのです〉。

無償労働だからこそ、好きな本を読んで自由な議論ができるのだ。これがビジネスになると邪心が入ってきてしまい、読書会という名称の自己啓発セミナーになってしまう。