コロナ危機、アメリカ「3兆円規模の教育政策」に不満が噴出するワケ

日本は何を学ぶことができるか
畠山 勝太 プロフィール

三つ目は州政府のショック・ドクトリンである。

日本でも子供の学習権を無視した9月入学の議論が出ているが、このように大きな社会経済的なショックが起こったときに、それを契機に自分たちが望んでいた政策を実現させようとすることをショック・ドクトリンと呼ぶ。

これがトランプ政権の基礎教育支援でも二つの領域で顕著に表れた。一つは教育の民営化、もう一つは州政府の権限強化である。

前回の記事(ポストコロナ時代のアメリカに求められる大統領は誰なのか)でも執筆したように、トランプ政権の目玉の教育政策は学校選択制・教育の民営化の拡大である。

トランプ政権の基礎教育支援の法案が署名された時に、私立学校や公設民営学校(チャータースクール)はどういう扱いになるのか不透明だった。

しかし、4月30日に発表された追加のガイドラインに、州政府は資金の流し先として私立学校も対象とすることが明記された。

州政府の権限強化については、繰り返しになるが、米国の教育は、地域の人たちが自分たちで集めた資金を、自分たちが選挙で選出した教育委員会と共に使いみちを決めるという、民主主義の育成を主目的としたローカルコントロールが主流であった。

しかし、1980年代後半から教育の権限を州レベルへ移管させようという州知事たちが登場した。そして、その代表格であったクリントン・ブッシュJrが相次いで大統領になることでこの流れが加速したが、州知事の経験がないオバマ政権の登場により、州よりも連邦政府が教育政策における権限を志向するという流れとなった。

 

しかし、トランプ政権の反オバマ色は連邦政府から州政府へという逆流を生み出したが、CARESにはそれが色濃く反映されている。

135億ドルの90%は学区(ローカル)へ流すこととされているが、裏を返せば10%を州政府が握ることが可能であり、州政府の権限を大いに強化することに貢献する資金となる。

さらに、冒頭で135億ドル+αが基礎教育支援へ流れると書いたが、CARESは州知事が教育で自由に使える(基礎教育でも高等教育でも良い)30億ドルの資金を提供しており、これが+αの正体である。

新型コロナの拡大をショック・ドクトリンとして教育における州政府の権限強化を志向しているのがありありと見て取れる。