コロナ危機、アメリカ「3兆円規模の教育政策」に不満が噴出するワケ

日本は何を学ぶことができるか
畠山 勝太 プロフィール

不満の声が上がる3つの理由

話を新型コロナ対策へと戻そう。

トランプ政権の今回のK-12支援は、金融危機の際のオバマ政権のそれとは大きく異なっている。

オバマ政権の基礎教育支援額は、43.5億ドルに過ぎないだけでなく、これを受け取るために様々な条件が付帯された。連邦政府が基礎教育にこのような介入をするのは異例中の異例で、オバマ元大統領は米国の歴代の大統領の中で最も教育政策に関与した大統領であることは疑いの余地がない。詳細を解説すると軽く本1冊分以上の分量となるため割愛するが、興味がある方は「Race to the Top」と検索していただきたい。

これに対し、トランプ政権の基礎教育支援額は135億ドル+αと、オバマ政権の3倍以上の規模となっている。さらに、その使い道も長期に渡る学校閉鎖の対策及び5つの教育法で定められた活動の何かというほぼどのような活動にも使える緩い規定となっており、学区の教育委員会の裁量が極めて大きい。しかし、それにもかかわらず、教育セクターからは不満の声が上がっている。理由は大きく以下の3つに集約される。

一つ目は資金額である。

たしかに金額を見るとオバマ政権の3倍以上と極めて大きなものに見える。しかし、そもそもオバマ政権のときに前述の非常識な対応が続出したことや、今回は金融危機を軽々と上回る失業者数が出ていることを併せて考えると、オバマ政権の3倍の額を出したとしてもまったく足りていない。

実際にこの程度の規模だと、前年比で10%程度教育予算が減少すると、支援額を上回る損失となってしまうし、現状の金額は教員組合から寄せられている要望額である750億ドルのわずか5分の1程度に過ぎない。

 

二つ目はオンライン教育促進のための資金確保がない点である。

日本に伝わる米国像というのは、おおむね東海岸または西海岸の比較的富裕な地域のそれであるため、そのような地域で行われているオンライン教育を持って、米国の新型コロナに伴う学校閉鎖対策は進んでいるという勘違いがなされるが、これは大いに間違っている。

富裕な地域から貧しい地域への再分配がなされないからこそ、富裕な地域で先進的な取り組みが出来るだけの資金・人的なリソースが確保されるわけであり、それに預かれない数多くの子供たちがいることを忘れてはいけない。

例えば、ロサンゼルスやニューヨークシティといった日本でも名の知られた大都市であっても、そこに住む子供の3分の1程度はオンライン授業を受けられるようなインターネットまたはデバイスへのアクセスがないと言われている(Los Angeles Times)。

また、筆者の住むミシガン州でも、ほぼ同様に子供の3分の1はオンライン授業を受けられない状況にあると調査結果が明らかにしている(Detroit News)。

このように都市の貧困地域および農村部を中心に少なくない数の子供たちがオンライン授業を受けられない状況で、不十分な金額を自由な使い道で渡しても、これら3分の1の子供たちがオンライン授業を受けられる体制は整わないと考えられる。

コロナ対策第二弾でこの点が対応されるのかもしれないが、少なくとも現時点においては、オンライン授業拡充のための予算が連邦政府レベルで確保されなかったのは悪手であったと考えられる。