# ドクターZ

肝心なことを隠して持論を展開、岡本財務次官「日本の財政論」の愚

作家・真山仁との対談で

肝心なことを説明していない

財務省事務次官の岡本薫明氏が3月31日配信の「東洋経済オンライン」の対談記事に登場したことが、話題を呼んでいる。対談の相手は、小説『ハゲタカ』などで知られる作家の真山仁氏だ。

掲載された写真を見る限り、収録されたのは財務省の幹部室だろう。対談が行われた経緯は、真山氏が小説『オペレーションZ』を著したためと見受けられる。同作は、日本国債が暴落する中、予算削減の極秘作戦に取り組む首相や若手財務官僚らを描いている。国家財政の収支があまりにアンバランスで、国の将来を疑問に思ったのが執筆の動機だと真山氏は言う。

肝心の対談だが、岡本氏の口からは、いかにも財務次官然とした、財政再建論が飛び出している。その一部を拾っていこう。

真山氏は、<『国の持つそうとうな資産も計上したバランスシートでみれば、国の借金額は決して大きくない』と主張する論者もいますね>と聞いている。

これに対し、岡本氏は、<バランスシートを見ると、確かに何百兆円という資産が国にはあります。でもこの主なものは、これまで公共事業で造った道路やダムなどです。これは売ること(換金)ができるかというとそうではない>と返した。

 

岡本氏はこう続ける。

<何よりもそのバランスシートを見てもらえばわかるんですが、国は債務超過になっているんです。国の債務はグロスではなく、資産を差し引いたネットで見るべきとの話がありますが、しかしネットの債務で見ても日本の水準は国際的に見て高い>

国のバランスシートは、財務省のホームページで公表されている。その最新版(2018年度)を見ると、'19年3月末現在で、資産675兆円、負債1258兆円だ。資産の中身を見ると、有形固定資産は184兆円だ。岡本氏の言うように、公共事業で造った道路やダムなどが主なものとは言いがたい。

有形固定資産以外の491兆円は、ほとんど金融資産だ。そのうち負債と両建てになっている公的年金の積立金や外貨準備は半分以下の232兆円しかない。岡本氏は説明しないが、金融資産の半分近くは、天下り先への出資金や貸付金だ。

バランスシート全体は、資産675兆円、負債1258兆円なので、債務超過はたしかだ。しかし、岡本氏は重要なことを説明していない。政府の財務状況を見るためには、政府だけでは不十分で、「関係会社」を含めた連結ベースのバランスシートが必要だ。

政府の連結のバランスシートは、資産1013兆円、負債1517兆円だ。ここに、本来追加するべき日銀のバランスシートを連結すると、資産1517兆円、負債2074兆円だ。しかし、負債のうち日銀分の日銀券と当座預金の合計501兆円は、原則として利払費なしなので、経済的な意味での負債性はない。つまり、連結ベースで見た政府全体の実質的なバランスシートは、資産1570兆円、負債1573兆円となる。

 

岡本氏の主張には、財政再建論に基づいたミスリードが多い。IMF(国際通貨基金)のレポートでも、日本の財政状況は世界の先進国の中でも比較的良いほうだと言われている。

人気作家との対談という格好で、肝心なことを隠し、自説を語るのはフェアではない。

『週刊現代』2020年5月2・5日号より

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