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アビガン、アクテムラ、ストロメクトール…日本の薬が世界を救う日

新型コロナの治療薬になるか?大型ルポ

2019年大晦日、中国・武漢市内の医療機関で27人が原因不明の肺炎が発症したことが、中国メディア経由で日本でも報じられた。年の瀬の慌ただしさと56年ぶりの東京五輪を迎える高揚感の中で、このニュースはどれほど深刻に受け止められただろうか。

ほどなく、肺炎の病因と判明した新型コロナウイルスは、巧みにヒトの間で感染を広げていった。

4月初旬、国際連合のグテーレス事務局長は、「第二次世界大戦以降例のない難局だ。多くの人が命を落とし経済は荒廃している」と発言(NHKのインタビューに答えて)。

5月半ばになっても、暗雲は世界中を覆い尽くしているが、幾筋か光が差しはじめた。治療効果を示すいくつかの薬が実用化されようとしているのだ。

治療薬候補として名前の挙がる薬のなかに、実は日本人研究者が関わった薬が、ファビピラビル(商品名アビガン)、トシリズマブ(商品名アクテムラ)、イベルメクチン(商品名ストロメクトール)と3つある。筆者は10年以上にわたり、「日本発の創薬」をテーマに取材しており、これらの開発者にも直接取材している。日本の薬が世界を救う日への期待を込め、これらの薬を紹介したい。

弱毒性なのに新型コロナが怖い理由

本題に入る前に、新型コロナウイルスについて少し解説しておこう。

コロナウイルスは、ヒトで風邪の原因となるありふれたウイルスとして4種類が知られているが、この新型ウイルスは、自然宿主であるコウモリに寄生し、センザンコウなどの哺乳類を介して、ヒトへの感染能力を獲得したとされる。

2003年に流行した重症呼吸器不全症候群(SARS)も、また別のコロナウイルスが原因だったが、こちらはわずか8ヵ月で、世界保健機関(WHO)がグローバルな封じ込めに成功したことを宣言している。SARS発症者は大半が重症化するため、早期に見つけ出して隔離可能だったことが奏功したとされる。

一方、新型コロナウイルス感染では、軽症者や症状のない無症候者も感染力を持つため、感染拡大に苦慮することになった。

Illustration by United Nations COVID-19 Response on Unsplash

日本では緊急事態宣言が出され、海外ではより厳格なロックダウンの政策を採った国も少なからずある。これらにより、「ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)」によるオーバーシュート(感染爆発)を防止する効果が期待されている。

もっとも、地域的な収束の道のりが見いだせても、地球上からこのウイルスを根絶することは難しい。どこかにウイルスが残っていれば、人々が往来を開始した途端、またウイルスを広めかねない。

ワクチンがまだない中で、人類は、「感染者を抑えること(オーバーシュートの回避)」と「感染者を増やすこと(短期間での集団免疫の形成)」という、明らかに相反する課題に挑んでいるようだ。

実は、新型コロナウイルスの感染が分かった人のうち、重症化するのは2割程度で、多くの人は軽症で済む。内外の抗体検査によれば、背後には、すでに感染して体内に抗体(侵入した異物を攻撃するタンパク質)ができた人が数百倍いるともされ、重症化率や致死率はさらに下がる可能性がある。

同じくコロナウイルスの感染では、SARSは致死率10%、MERS(中東呼吸器症候群)は30%である。これらに比べて新型コロナは弱毒性のウイルスでありがら、世界中で強く恐れられている最大の理由は、お墨付きを与えられた治療楽がなかったためだろう。

たとえば、季節性インフルエンザでは、世界中で毎年25〜50万人もが命を落とすものの、オセルタミビル(商品名タミフル)などの治療薬の存在が、安心につながっている。

新型コロナウイルス感染症に対する薬の開発は世界中で進められている。新薬開発には通常は5~10年といった年月を要するが、すでに承認された楽の中に有効性を示す物が見つかれば、手続きを簡略化してより早く使える可能性があると期待されている。

「アビガン」開発者の声

日本国内で、新型コロナウイルス感染症治療薬として、1番乗りを果たしたのはレムデシビル(商品名ベクルリー)で、米国ギリアド・サイエンシズが、エボラ出血熱の治療薬として開発を進めてきた薬である。