認知症の親が死を望んだならば…安楽死をめぐる家族の「厳しい選択」

小説『終の盟約』超高齢化社会のリアル
楡 周平 プロフィール

悲しみとともにくる開放感

―久は「事前指示書」を輝彦に託していました。指示により久は知人の専門病院に入院となります。

事前指示書とは、自らが判断能力を失った際に行われる医療行為について、前もって意思表示しておく文書です。うちの場合も、母から渡されています。毛筆で書かれ、「延命治療はしないで」「苦痛を緩和する治療は受けるがそのために寿命が縮んでもよい」といったことが書かれています。

事前指示書はようやく世間で知られるようになってきました。そして、延命治療をやらないこと、中止することは認められつつあります。

医療現場でいざ医師に「延命治療をどうします?」と家族が聞かれた時、指示書なしに「やらないで」などとは言えるものではないでしょう。指示書があれば「本人の希望です」と言えることになります。これは本当に大切なこと。ぜひ書いておくべきだと私は思います。

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―作中の久に延命治療は必要ありませんでした。入院1ヵ月半後にあっさりと心不全で亡くなってしまったからです。

父の行動や入院が負担になっていた輝彦は、悲しみながらもホッとします。もちろん、介護問題がどうであれ、家族が死んだら悲しいわけです。だけど、「これで終わった」という解放感や安堵する気持ちも生じるものなんです。輝彦は職業柄、父の突然死に不審を抱いてもよかったのですが、それよりも死を容認することにしました。

 

―久の死についての疑惑は、弟・真也の家族から浮上してきます。それは、医師間に「安楽死」の盟約を結ぶグループがあるのではないかとの疑惑でもあります。

物語としては、弁護士の真也と医師の輝彦が疑惑を追及していくことになります。けれど、グループの存在や全容はなかなか見えてはきません。

私は、安楽死や尊厳死については、国民的な議論が早急に、真剣に、広く行われるべきだと考えているんですよ。この高齢長寿社会、医療技術が高度に発達した社会では、生き長らえることができてしまう。

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