玄関で靴を脱ぐように…コロナから再起、イタリアの「新しい生活様式」

大変革を余儀なくされた人々のいま
田島 麻美 プロフィール

商店街に出かけてみると…

フェーズ2に突入した翌日の5月5日、久しぶりに家から徒歩10分の距離にあるスーパーまで足を伸ばした。

ロックダウンの2ヵ月間、買い物は週に一度、自宅から一番近いスーパーで済ませるようにしていたので、少し離れた所にあるお気に入りのスーパーまで行くことができなかった。距離にすればほんの900mの位置にあるスーパーが、なんと遠かったことか。

道々、動き出した街の様子を観察しながらゆっくりと歩いた。小さな商店が軒を連ねる通りには先週よりも多くの人の姿が見られたが、心配していたような人混みはできていない。

 

すれ違う人は皆マスクを付け、さらに半数以上の人はゴム手袋もしっかり付けている。パン屋や八百屋に並ぶ人々は、既に慣れた様子で1mの距離を目で測ってはチョコチョコと移動している。

これまでデリバリーのみ許可されていたピザ屋やバールの店先にはテイクアウトの客用にメニューを置いた仕切りテーブルが置かれ、簡易注文窓口が出来ていた。シャッターが半分だけ開いた衣料品店や靴屋、雑貨店は、18日からの営業再開に向け、店内にできるだけ広いスペースを確保しようと、商品の陳列に四苦八苦している。

誰もが「1日も早く仕事を再開したい」と欲していることが肌で感じられるような光景が、商店街のあちこちで見られた。

ピザ屋の店頭に作られた即席のテイクアウト専用カウンター

変化を甘んじて受け入れた

ロックダウン直後から始まったマスク、手袋、店頭の消毒ジェルの使用は、もはやイタリアの日常生活に不可欠なものとなった。

スーパーや食料品店、薬局はもちろんのこと、営業再開の準備をしている靴屋や衣料品店の店先、駅の改札口にも消毒ジェルのスペースが出来ていた。さらに、1日に何度も手洗い、うがいをする習慣がついたことは言うまでもないが、私のイタリア人の友人は皆、「玄関で靴を脱ぐようになった」と話していた。

2ヵ月前まで目にしていた路上のキスも抱擁も、大きなテーブルを囲んでの賑やかな食事風景も、もうしばらくの間は見ることが出来ないだろう。やたらと人とくっついて、大勢でワイワイやるのが当たり前だったイタリア人の日常生活は、新型コロナウイルスによって大変革を余儀なくされた。

だが、イタリア市民はそれらの変化を特に大騒ぎすることもなく、甘んじて受け入れた。その切り替えの早さと徹底ぶりは、個人主義を貫き通すイタリア人を見慣れた私にとって、眼から鱗が落ちるほどの見事さだった。

本格的な経済活動を一日も早く再開し、ウイルス感染をこれ以上拡大させないこと。イタリアは今、一丸となってそのたった2つの目標を見据えながら、ゆっくりと歩き出した。