テレビ朝日『M 愛すべき人がいて』HPより

ドラマ『M 愛すべき人がいて』の評価がまっぷたつに割れている理由

『テセウスの船』とも共通する

過剰なまでの「人間の醜さ」

テレビ朝日のドラマ『M 愛すべき人がいて』(土曜午後11時15分、9日は特別編)のSNS上の評価が割れている。おそらく特異な作風のせいだろう。

このドラマは一種の時代劇と捉えるべきなのかも知れない。1990年代の音楽業界の一部分を切り取り、デフォルメした時代劇。そう考えると、このドラマが苦手な人も違和感が和らぐ気がする。

原作は、浜崎あゆみ(41)のサクセスストーリーを題材にした同名ノンフィクション小説(小松成美著・幻冬舎文庫刊)。ドラマではトップスターを目指す少女・アユ(安斉かれん、20)が、レコード会社専務のマサ(三浦翔平、31)と二人三脚で、夢の実現をはたすまでが描かれる。

テレビ朝日『M 愛すべき人がいて』HPより
 

このドラマは大映テレビ作品との共通点を見出す声も多い。事実、オーバーな演技や臭いセリフ、人間の醜さを過剰なまでに描くところなどが、大映テレビ作品と酷似している。

大映テレビとは、かつて存在した映画会社・大映のテレビ番組制作部門が独立し、1971年に設立された会社。過去には『スチュワーデス物語』(TBS、1983年)、『不良少女とよばれて』(同、84年)、『ヤヌスの鏡』(フジテレビ、85年)などのヒット作を生んだ。作品は前述の特徴を共有している。

『M』と大映テレビ作品に共通の臭いがするのは当然だ。『M』の脚本を書いた鈴木おさむ氏(48)自身、大映テレビ作品を意識しているのだから。鈴木氏は『M』の開始前、次のように語っていた。

「原作に大映ドラマのような衝撃なキャラクターも登場するオリジナリティーも足して、新たなシンデレラストーリードラマとしてお届け出来ると信じております」(『M』のホームページより)

『M』は大映テレビ作品へのオマージュなのだろう。具体的な酷似点を挙げ始めたらキリがない。例えば、主人公で未来のトップスター・アユ(安斉かれん)の大好きな祖母・幸子(市毛良枝、69)が、第3話で不意に病死してしまう。主人公にとって大切な人を惜しげもなく死なせるのは大映テレビ作品の方程式の1つである。

無名の高校ラグビーチームが全国制覇を成し遂げるまでを描いた1984年の大映テレビ作品『スクール☆ウォーズ』(TBS)では、まず16歳の部員・イソップが、脳腫瘍によって非業の死を遂げた。部員たちの溜まり場だった中華料理店「新楽」のマスター・大三郎(故・梅宮辰夫さん)もヤクザに刺されて死んでしまう。物語を盛り上げるためなら、容赦ないのだ。