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大打撃の音楽業界、「2010年代のアメリカ」は日本の未来か

ポストコロナに向けてのヒント

新型コロナウィルスの感染拡大によって、大きな打撃を受けている音楽業界。特にライブ・エンタテインメント業界においては、年間市場規模の約4割が失われ、一つの産業が吹き飛んでしまうほどの大きなインパクトが予想されています。

そして音楽やエンタテインメントだけでなく、この危機的な状況は、飲食業や観光業やイベント産業など「人が集まること」を前提にした、あらゆる業種に広がっています。

この先、どんな未来が待っているのか。

大学卒業後には一般企業に就職、サラリーマンとしてのキャリアを経て30歳で会社を辞め渡米、その後音楽家としての活動に専念し2016年にはグラミー賞にノミネートされるという経歴を持つ音楽プロデューサーのstarRoさんは「2010年代のアメリカで起こったことが、日本のこれからを占うヒントになる」と言います。

今の世界が2010年のアメリカと重なる

2000年から下降線を辿り、リーマンショックを迎え、壊滅的になった2010年ごろのアメリカの音楽市場。その頃、音楽から書籍、動画までが一気にストリーミングやデジタル配信へとシフトを加速させました。

景気の停滞と消費者行動の大転換によって、それまでのマスマーケティングによる勝利へのマニュアルが通用する領域が限りなく狭まり、相対的に無数の無名アーティストの台頭を生みました。

その無名アーティストの大群の一人が私でした。2007年、それまで勤めていた日本の企業を辞めてLAに移住し、現地で会社勤めをしながら仕事の合間を縫って音楽制作を続けてきた私は、これと言った商業的ヒットを出すこともないまま2016年にグラミー賞にノミネートされるまでに至ってしまいます。

同じく2016年にミックステープ『Coloring Book』を発表したChance The Rapperは、一度も音源を販売したことのないアーティストとして初のグラミー賞での3部門の受賞を成し遂げます。つまり、アメリカ音楽市場ではゲームチェンジが起こっていたのです。

日本でも、昨年メジャーレーベルのアーティストが軒並みストリーミングでの視聴を解禁したため、今後一気にCDからストリーミングへの移行が進むと言われています。音楽ビジネスのパラダイムシフトが起きつつあるタイミングで、さらにコロナ禍の影響で経済の停滞、音楽の消費行動の変化なども避けられません。

 

この状態が、私が経験した、音楽流通のパラダイムシフトとリーマンショックによる経済停滞の影響の両方が大きな打撃となった2010年頃のアメリカをどうしても彷彿させてしまうのです。そして、その先に展開された世界は、日本のこれからを占うヒントになるのではないかと思えてなりません。

音楽の売り方が変わってしまった。そもそも大不況で売れる気もしない。そんな状態の中でアメリカでは何が起きたのでしょうか。