ワクチンが成功しない可能性も多いにある。同じコロナウイルス感染症であるSARSやMERSにおいても、ワクチン開発が試みられたものの成功していない。SARSの流行は2002〜2003年にかけてだが、15年以上経過してもまだワクチンは開発されていないのだ(SARSはワクチンが開発される前に終息したので、開発がすすまなかったという背景もある)。

また、一般的な風邪を引き起こすコロナウイルスには、長期的な免疫がつかないことが知られている。新型コロナウイルスに関しては、国内外で抗体検査がいくつか実施され、実際の既感染者は、検査を受けて発表された感染者数よりもはるかに多い可能性が示唆されているが、抗体ができたからといって二度とかからないかはまだわかっていないのだ。

治療薬にも「特効薬」がない

新型コロナウイルスの治療薬についても、「特効薬」の登場が待たれている状況だ。

5月7日、エボラ出血熱に使用されるレムデシビルが国の「特例承認」によって早期に承認されたが、4月29日に発表された中国の237人を対象としたランダム化比較試験では、レムデシビルは症状改善までの時間や死亡率を有意に改善せず、有害事象があることも報告されている※3

※まだ論文化はされていないが、同29日に発表されたNIH(アメリカ国立衛生研究所)の研究によると、1063名規模の多国にまたがる共同研究によって、レムデシビルはプラセボに比べて症状の改善を早める(とはいえ、有意と言える死亡率低下はなかった)という報告もあり※4、論文化が待たれている。

インフルエンザ治療薬として開発された日本発の薬であるアビガンも5月中の承認を目指しているが、国内での第3相臨床試験は6月末に終了する見込みであり、まだ各国での大規模試験の結果も明らかになっておらず、医師のあいだでは拙速であるという意見がある。

アビガンの効果についての研究で現在明らかになっているものとしては、抗HIV薬カレトラと比較しての80人規模の臨床試験で、カレトラに比べてCTで見たときにより改善を示しており、ウイルス消失までの時間がやや短いという結果だった(この論文は一度撤回され再掲載されている。理由は不明)※5

つまり、現在注目されているレムデシビルにしてもアビガンにしても、「特効薬」であるとはいえないのだ。