コロナ不安で「権威に従い、他人を叩きたがる人」が増えた深い理由

進化心理学から説明する「体制順応主義」
Ore Chang プロフィール

異質な者を排除する心理

感染症の脅威は、なぜ、われわれヒトを体制順応主義者に変えてしまうのだろうか。ここでいう体制順応とは、社会のルールや政治的思潮に疑問を抱かず、従順かつ無思考に従いやすくなる傾向のことを指す。

体制順応主義者は、市民の皆が共産主義に傾倒していれば自分もそこに同調し、逆に皆がレッドパージ(赤狩り)に精を出していれば自分もそれに参加するといったような態度をとる。

もちろん、社会的な動物として進化しているヒトは個体差こそあれ、誰もがこういった気質を持ちあわせている。しかし、進化心理学者が発見したのは「感染症の脅威」というキュー(=心理的反応のトリガー)が、この先天的な傾向をとりわけ強めるという事実だ。*3

なぜだろうか。じっくり説明していこう。

──まず、われわれホモ・サピエンスは、先史時代のアフリカの狩猟採集社会という「文化的環境」において、何十万年にわたり「心」を進化させてきた「動物」だということを念頭において欲しい。

感染症対策は、人類の専売特許ではない。たとえばチンパンジーは、一部の心ない人間たちと同様、「醜形・奇形差別」という手段によってこれに対処することが知られている。

〈霊長類学者のジェーン・グドール氏は1966年、タンザニアのゴンベ国立公園でチンパンジーを研究していたとき、ポリオ(小児まひ)になったマクレガーという個体を観察した。感染力の強いポリオウイルスによる感染症だ。……仲間たちはマクレガーを攻撃し、群れから追放した。あるとき、体の一部がまひしたマクレガーが、樹上でグルーミングしている仲間たちに近付いた。マクレガーは社会的接触を求め、あいさつしようと手を伸ばした。しかし、仲間たちは立ち去り、振り返ることすらなかった〉「驚きの特殊能力、『社会的距離』をとって感染を防ぐ動物たち」ナショナルジオグラフィック日本版サイト)
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われわれサピエンスも、こうした原始的な社会的排除行動を実行することがある。しかしわれわれは、さらに高度な感染予防手段を発達させてきた動物だ。

それが「道徳的規範や宗教的マナーに従う/従わせる」という振る舞いである。

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