吉野彰博士 Photo by Getty Images

今から学んでも遅くない!ノーベル賞受賞者・吉野彰氏は何をしたのか

現役東大生のサイエンス入門「電池」
世界で最も権威のある賞といえるノーベル賞。毎年話題になり、日本人の受賞者がいれば大ニュースになります。しかし、その功績を簡潔に説明できる人がどれだけいるでしょうか……。

好評連載「現役東大生のサイエンス入門」第5回は、わかりやすい「リチウムイオン電池の仕組み」を紹介します!

月日が経つのは速いもので、昨年のノーベル賞発表から半年以上が経ちました。日本人では吉野彰(1948-)博士がリチウムイオン電池の開発で化学賞を受賞しました。皆さんのうちのほとんどが、吉野博士の名前を聞いたことがあると思います。

しかし、吉野博士が何を発見し、どう世界を変えたのかわからない人も多いのではないでしょうか。

吉野彰 Photo by Getty Images

というわけで、今回は「リチウムイオン電池」のお話です。

そもそも「電池」って何?

リチウムイオン電池は、電池のプラス極とマイナス極の間をリチウムイオンが行き来することにより電気を生み出す電池です。リチウムイオン電池の特徴として、何百回も繰り返し充電でき、他の充電できる電池と比べて軽く、電圧が高いことがあります。

リチウムイオン電池の概容 Illustration by iStock

この特徴により、スマホなどの携帯用電子機器が長時間快適に使えるようになりました。さらに、太陽光などの天候に左右されやすい再生可能エネルギーによる電気を貯めることができるようにもなったのです。こういった進歩が、ノーベル賞委員会に評価されています。

では、この特徴はどのようにして生まれたのでしょうか。これを解き明かしていく前に、まずは電池について説明しましょう。電池とは、化学反応などによって物質がもともと持っているエネルギーを電気に変える装置なのです。

 

物質が化学反応を起こすとき、反応する物質同士で電子というマイナスの電気を帯びた粒子をやりとりします。電池に導線などを繋ぐと、電池の中の物質が化学反応を起こし、生じた電子が導線の中を流れます。この電子の流れこそが電気です。

リチウムイオンの利点

前に述べたように、リチウムイオン電池はリチウムイオンの往来により電気を生み出しています。リチウムイオンとは、リチウムという金属から電子が一つ抜けてプラスの電気を帯びたものです。

リチウムは軽く、また金属がイオンになるときのエネルギー変化が大きい性質があります。つまり、リチウムは軽いのに高い電圧を出すことができるという、電池にとても適した性質をしているのです。

昨年のノーベル化学賞受賞者の一人スタンリー・ウィッテンガム(Michael Stanley Whittingham、1941-)博士は、この特徴を生かしてリチウム電池を発明しました。これは、マイナス極に金属状態のリチウムを、プラス極に二硫化チタンを使っています。二硫化チタンは層状の構造をしているため、リチウムイオンが出入りすることができるのです。

スタンリー・ウィッティンガム Photo by Getty Images

このように、層状の化合物にイオンが出入りすることは「インターカレーション」と呼ばれ、後の電池材料の研究にも応用されています。このリチウム電池は従来より高い2V以上の電圧を安定して出すことができ、また長期保存することができます。