急浮上した「9月入学」制度について、教育ジャーナリストのおおたとしまささんが問題点と改善点を考察。その第1弾は「9月入学」を拙速に進めることの弊害を具体的にお伝えした。第2弾は、「9月入学」をまるで魔法の杖かリセットボタンのようにとらえられているあやうい現状と、それより先に変える必要があることについて考察する。

「9月入学」は「魔法の杖」か
「リセットボタン」か

先の記事で挙げた多くの問題点は、「9月入学」が内包するリスクの氷山の一角にすぎない。それなのに、なぜ少なくない知事が、あえてこのタイミングで率先して声を上げたのか。そこを想像してみる必要がある。

休校期間中の遠隔的学習指導においては、特にオンライン授業の導入で、私立と公立の間での対応格差が露呈した。公立の学校の間でも、家庭との連絡方法や学習指示の与え方については地域差が大きいことが文科省の臨時調査でわかっている。

そんななか、たとえば広島県では教育長が強力なリーダーシップを発揮し、県内約30万人すべての児童・生徒のためにグーグルのクラウドサービスのアカウントを取得し、休校中でも全員がオンライン学習を行える体制づくりを急ピッチで進めている。

一方、遅れの目立つ地域では、当然ながら住民からの不満の声が上がる。そこで、「いっそのこと、9月から仕切り直しにしてしまえば、これまでの対応の遅れもチャラにできる!」と一部の自治体の長が発想したのではないかと邪推も浮かぶ。子どものころ、テレビゲームで自分の負けが込むと、いきなり「リセットボタン」を押す友人がいた。あれと同じではないか。

実際のところ、彼らからしてみれば「9月入学」は「リセットボタン」というよりも「魔法の杖」のように見えるのだろう。「半年延長するからその間で挽回してね」と教育現場に丸投げすることで、新型コロナ関連の課題が山積する中でも教育に関しては「すでに手を打った」と言うことができる。

もちろん「魔法」なんてない。「魔法の杖」が振るわれた瞬間から、教育現場の教員たちが「魔法使い」の手下の「小人」のようにせっせと働き、表向きは「魔法」が効いたように見せなければいけないのである。

魔法の杖なんてない Photo by iStock