金正恩「最新写真」が物語る、北朝鮮の異変と消えない健康不安

「死亡説」「危篤説」の真相は…?
牧野 愛博 プロフィール

「出たくても出られなかった」

金正恩氏は2014年9月から10月にかけて約40日間、公開の活動をしなかったことがある。当時は足首にできた腫瘍を取り除く手術を受けたとされる。今回、公開活動がなかった期間は半分の20日だったが、前述の元韓国政府高官は「健康問題に限れば、今回の方が深刻だ」と語る。

当時は張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長が2013年12月に処刑されてから1年も経たない時期にあたり、北朝鮮の権力層に動揺がみられたという。2015年4月末には玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力相が処刑されたといわれる。

2013年末に処刑されたとされる張成沢氏(Photo by gettyimages)
 

元高官によれば、当時の韓国政府は「足首の手術というよりも、権力が不安定だったため、正恩氏は平壌から離れられず、現地指導もできない状況だった」と分析したという。

この元高官は「正恩氏は愛民政治を掲げており、自分を犠牲にしても人民のために尽くす政治スタイルを取っている。実際、正恩氏が足を引きずる映像も公開されている。2014年当時に公開の席にしばらく出てこなかったのは、健康の障害というよりも、非公開で党内協議などを重ねる必要性に迫られていたからだと思う」と分析する。そのうえで、「今回は平壌ではなく、江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)にいたわけだから、権力に不安があったわけではない。公開の場に出たくても出られない状態だった、とみるべきだ」とも語った。

一部には、新型コロナウイルスの感染を恐れて元山に滞在しているという指摘も出ていた。正恩氏が本当に心疾患を抱えていれば、新型コロナに感染した場合に重篤化する恐れが強く、警戒していたことは間違いないとみられる。ただ、正恩氏が1日、北朝鮮西部の平安南道順川を訪れたことで、感染問題が元山滞在の唯一の理由だったとは説明しにくい状況になっている。

正恩氏はまだ30代半ばだが、持病が悪化し、常に健康問題の不安を抱えることになった可能性がある。