コロナで国のご都合主義が露呈…効率化する医療の“大変な末路”

「丁寧な看護なんてできなくなった…」
小林 美希 プロフィール

治りきらない患者の“追い出し”

一方、病院の収入は治療内容や医療体制によって「診療報酬」で決められた保険点数がつき、それが主な収入になるため、“経営”を考えれば、不採算な医療はできなくなる。すると当然、民間病院ほど採算の合う診療科、治療を選ぶようになり、結果、患者を選ぶことにつながる。

国は医療費を抑えるために、病院の役割を明確に分け、重症患者が入院する日数を短くし、診療報酬の点数が高くつくようにした。患者の入院日数が長引けば保険点数が低くなるようになると、病院は治りきらない患者でも退院させ、次の役割の病院に転院させるようになった。

現場にも“ベッドの回転率”(病床稼働率)を高めることが求められ、治りきらない患者の“追い出し”が始まったことで、看護師の多くが「入院患者が治って退院していく姿を見送ることができなくなった。患者の入れ替わりが激しく、丁寧な看護なんてできなくなった」と嘆いている。

病院によっては、一人暮らしで身よりのない高齢者の入院を受け付けなくなった。独居の高齢者が、診療報酬の点数が高い在院日数のうちに退院できないと病院の収入が低くなるからだ。自治体病院が中心となって、その受け皿になってきた。

 

平川主任研究員は続ける。

「社会保障審議会の医療部会で、日本医師会や民間の病院団体が『まずは公立病院から病床を削減すべき』と、民間病院の病床削減には大きな抵抗を示した。

これに唯一、異を唱えたのは連合で、『公的・公立も民間も、被保険者からみれば変わらない。同じテーブルで議論すべき』『県内の病院病床数に占める公立の割合は、2割程度であり、ここだけを議論するのはおかしい』と主張しきた。

しかし厚労省は、医師会の圧力に屈し、公的・公立病院の病床の在り方の議論を先行させるため、2019年秋に、公立・公的病院の再編・統廃合を検討するデータを公表した」