深刻すぎるコロナ危機で、ヨーロッパが自信喪失している

「アジアに学べ」という声も…
笠原 敏彦 プロフィール

アジアに学べ

こうした視点から注目されるのは、欧州で「アジアに学べ」という声が出始めていることである。

欧米諸国ほど厳しい都市封鎖をせず、スマホの位置情報、追跡アプリなどIT技術を使って感染封じ込めの効果を上げている韓国や台湾を危機管理のモデルと見る動きである。

例えば、日経新聞(4月20日付朝刊)に掲載された英紙フィナンシャルタイムズ前編集長、ライオネル・バーバー氏のコラム「感染症対策 アジアに学べ」は次のように指摘する。

「2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を乗り越えたアジア各国・地域の対策は、個人の生活へより介入するものだった。韓国と台湾は、欧州が恥じ入るほどの柔軟性とスピードで、検査を拡大した」

ポイントは、「個人の生活へより介入する」と「柔軟性」だろう。

筆者が「欧州VSアジア」の論点を簡潔にまとめるなら以下のようになる。

欧州諸国は、市民のプライバシーを絶対視するため、韓国や台湾のようにIT技術を使って個人情報を収集し、対策に使うことのハードルは高い。プライバシーの尊重とは自由、人権、民主主義など欧州が掲げる理念の金字塔である。

しかし、その結果はどうか? 都市封鎖や外出制限など極めて厳しい私権の制限に踏み切らざるを得なくなった上、感染の封じ込めに「失敗」したではないか。

公衆衛生(public health)の発想はそもそも、感染封じ込めという「公益」のためには個人の権利の制限はやむを得ないというものだ。ならば、パンデミックのような非常事態には、プライバシーと公益のバランスを図り、柔軟にIT技術を駆使し、個人情報を感染封じ込めに利用すべきではないか。

以上。

 

この論点は、古くて新しい、「個」と「集団」のどちらが優先されるかという価値観をめぐる「西欧VSアジア」の構図に当てはまるものだ。そこにIT技術という危機対応に極めて効果的な要因が加わり、新たな争点が生まれているのである。

プライバシーを尊重する欧州で、韓国や台湾などアジア諸国より厳しい都市封鎖や外出制限などの私権制限が行われたことはパラドックス(逆説)である。