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視覚に訴えかける、兵士たちのリアル

桜島」は、作者の梅崎春生が、太平洋戦争末期に海軍に召集され、鹿児島県坊津に赴任した経験をもとに書かれた小説です。

本土最南端を防衛するために、水上特攻隊が配備されており、主人公は通信科に配属され、敵機の機銃掃射から逃げながら、冷静に戦局を見ていて、自らの死も覚悟していきます。

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そうした主人公の心情ももちろんですが、片耳のない娼妓との会話や、家族の皆から蔑まれている老人が首吊りしようとして死に切れない描写など、それぞれの場面が具体的で、視覚に訴えるように描かれています。

それは黒、赤、白、緑といった色の形容を多用していることも大きいですね。終戦を知り、夕焼けに照らされた桜島岳を見て、主人公が嗚咽するラストにも心を打たれました。「桜島」を読んだ後、高校の修学旅行で鹿屋海軍航空隊(特攻隊出撃基地)跡地を訪れました。

 

特攻隊員たちが国旗に書いた寄せ書きには、「天皇陛下万歳」「靖国で会おう」といった言葉の中に、「お母さん、ありがとう」「気をしっかり持て」といった、素直な気持ちが表れたものも発見し、これが本心だよなと心に染みました。「桜島」は終戦間近の兵士のリアルな日常と心情を、眼前に突きつけられましたね。

大学留年期の焦る気持ち

私は物理学を学びたくて大学に進学したものの、理系に向いていないことを悟り、文系に進路変更し1年留年をしました。

そのため、時間は沢山あって、一日1本ペースの映画鑑賞や音楽、読書に没頭していました。寺山修司やチェーホフを特によく読んでいました。