コロナ禍で浮き彫り、同調圧力と相互監視の「世間」を生きる日本人

企業名が晒され、感染者が差別される…
佐藤 直樹 プロフィール

しかも、「世間」にはきわめて細かなルールがある。ここで詳しく述べる余裕はないが、それには、(1)お中元・お歳暮に代表される「お返しのルール」、(2)先輩・後輩、年上・年下、目上・目下、格上・格下などの「身分制のルール」、(3)「出る杭は打たれる」に象徴され、「みんな同じ」だと考える「人間平等主義のルール」、(4)「友引の日には葬式をしない」といった「呪術性のルール」がある。

これらのルールを遵守しないと「世間」から排除されるが故に、日本人はこれをじつに生真面目に守っている。誰に強制されたわけでもないのに、過剰に忖度し、自主規制し、「自粛」する。日本の犯罪率の低いのも、ついでにいえば自殺率が高いのも、他国では考えられないほど「世間」の同調圧力がつよいためである。

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〈戦時〉が露出してきた

トランプ大統領は自分のことを「戦時大統領」と称し、安倍首相はこの事態を「第三次世界大戦」だと口走ったらしい。なるほど。いま私たちが直面しているこの未曾有の事態は、一言でいえば〈戦時〉といってよいのだろう。

〈戦時〉なのだから、私権を制限する「特別措置法」も、与野党一致の「大政翼賛会体制」のもとでさしたる抵抗もなく国会を通過した。その間「桜を見る会」問題も「森友学園」問題も、ぜんぶチャラになった。〈戦時〉なのだから、「国難」なのだから、「非常時」なのだから、「挙国一致」なのだから、政府批判はひかえよというわけだ。

この〈戦時〉にあって、欧米諸国の対応はどうだったか。総じていえば、「外出禁止命令」と「罰則」による都市のロックダウンである。このように国が「命令」と「罰則」に頼らなければならないのは、端的にいって、欧米では「法のルール」にもとづく断固とした強制力がなければ、誰も政府のいうことを聞かないからだ。そうなるのは、社会が「法のルール」だけから構成されているからである。

そして場合によっては、「法のルール」にもしたがわないことがあるのは、家族との面会が制限されたことに端を発した、3月初旬のイタリアの刑務所での暴動をみればすぐに分かる。あのときは、受刑者の家族が、暴動がおきた刑務所の外で堂々デモをしていた。