アメリカで「コロナ文化戦争」勃発…その深刻な現実

とうとうトランプ大統領がやらかした
池田 純一 プロフィール

ただ、キャンペーンの集会であれば、自分が何を言おうと拍手や歓声で迎えられるのに、このブリーフィングの時間ではジャーナリストたちの質問攻めにあい、トランプが怒声をあげることも少なくなかった。問題はやはりトランプの発言に一貫性がなかったり、明らかに誤った情報や間違った知識が混ざっていたりしたからで、特に公衆衛生に関する発言については、専門家が修正することが多かった。

反対に、そんな話を聞かされるジャーナリストたちからすれば、苦行のような時間で、そのような所見を、ブリーフィングの報告とは別に記す人も散見された。極めつけが、冒頭で紹介した消毒剤の摂取を促したものだったのだが、それ以外にも、太陽光線がウイルスの活動を低下させるから日に当たろう、などとも発言し、専門家から、しかし、それは決して治療ではないから、と釘を差されていた。

この1ヵ月あまりのトランプの言動からすると、本当のところ、どこまで感染の防止についてきちんと理解をしているのか疑わしい。それを最も象徴しているのが、“LIBERATE MICHIGAN! (ミシガンを解放しろ!)”とツイートし、ホワイトハウスが発した「コロナ対策ガイドライン」の基本であるソーシャルディスタンシングを自ら破ることを促したことだろう。

「LIBERATE!(解放しろ!)」

ことの発端は、州知事たちによって、大統領の権限を全否定されたことだった。

再選に向けて景気の落ち込みを気にするトランプは、前回も記したように、とにかくできるだけ早く経済活動を再開(リオープン)したいと考えており、そのタイミングを決めるのは大統領の自分だと、それこそデイリーブリーフィングの席で大見得を切ったのだが、その発言に即座に州知事(ガバナー)たちが噛み付いた。その意趣返しが、自宅待機令を無視してでもリオープンを求めて行動せよ、と促す一連の“LIBERATE!(解放しろ!)”というツイートだった。

 

ちなみに大統領選において、景気の浮沈は、現職大統領の再選の可能性を占うバロメータであり、任期中の景気後退は現職大統領にとっては危険信号である。そして、目下のアメリカの景気低迷は、すでに1929年の“Great Depression(大恐慌)”に匹敵するレベルで、中には“Great Lockdown(大封鎖)”と呼ぶ人も出てきている。景気の後退が、感染防止のためのソーシャルディスタンシングに基づく「都市封鎖(Lockdown)」に発したものだからだ。だからこそ、トランプは封鎖を解いて経済活動の「リオープン(再開)」を促したくて仕方がない。