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アメリカで「コロナ文化戦争」勃発…その深刻な現実

とうとうトランプ大統領がやらかした

トランプ大統領がやらかした

いつか起こるのではないかと多くのアメリカ人が危惧していたことがついに起こってしまった。2020年4月23日、とうとうトランプ大統領がやらかした。コロナウイルスの感染予防には何よりも接触感染の防止が重要で、そのためには手洗いを心がけるのと同時に、テーブルなど日頃手を触れるところを消毒剤で拭いておくことが大事だ、という公衆衛生の専門家の話を聞いて、なにを思ったのか、「消毒薬のブリーチを飲むなり、体に射てばウイルスを死滅してくれるから大丈夫!」という発言を真顔でしてしまったのだ。それも、コロナ対策のために毎日報道機関の記者の前で行っている公式のブリーフィングの会場でだ。

もちろん、この発言の直後から、メディアやホワイトハウス関係者は、このトンデモ発言の火消しに奔走することになる。ただでさえコロナウイルスの感染者への対応にてんてこ舞いの時に、死につながるような誤った話を大統領が自らするとはどういうことか!と半ば呆れ半ば怒りながらだ。

どんな方法であれ、消毒剤を人体に取り入れたら大変なことになる。実際、アメリカではだいぶ前から、「タイドポット・チャレンジ」と呼ばれるYouTubeの動画で、洗剤や消毒剤を飲んでみせる愚か者が続出し、救急車で病院に搬送される事件が相次いでいた。処置が遅れたため死に至る人や、死は免れても重度の後遺症を患う人も出ている。トランプの発言は、そんな動画レベルのものと思われたわけだ。

さすがに今回ばかりは、トランプびいきで有名なテレビ番組Fox & Friendsも見逃すことはできず、消毒薬なんて絶対飲まないように!とトランプの発言を全否定した。もちろん、洗剤や消毒剤のメーカーからは、万が一にも、消導剤を飲まれて訴訟でも起こされたら大変だと、急遽、絶対飲んではいけない、身体に入れるなどもってのほか、と注意喚起を促した。

アメリカでよく聞く「ほら話」のような本当にあった話として、ペットの子犬を電子レンジに入れたら死んでしまった、賠償しろ!という訴訟の話があるが、そのレベルのトンデモ話ということだ。コロナウイルス災禍への対応から来る過度の疲労が原因の心神喪失なのか、それとももとからそのレベルの判断能力しかないのか。いずれにしても、大統領の執務を行える心理状態ではないのでないか?と周りが思わずにはいられないものだった。

実のところ、トランプが大統領に就任した直後の2017年の時点で、ある精神科医のグループが中心になって、大統領としての彼の精神状態への懸念を表明する本を出版していた。『ドナルド・トランプの危険な兆候』がそれだ。その中で、主には2016年大統領選におけるトランプの言動に基づき、彼のナルシズムや権力願望、衝動性、あるいはサイコパスと思しき「危険な徴候」について触れている。もっともこの本の執筆者たちの懸念の中心は、もっぱら精神的安定を著しく欠くトランプが、他国を殲滅できる核兵器のスイッチを押せる権限を持っていることにあったのだが、まさか、今回の消毒剤発言のように、不特定多数のアメリカ国民の生命を危険に晒すような言動をするとまでは思っていなかったのではないだろうか。