休校・閉園・外出自粛に加え、「どこにも行けないゴールデン・ウィーク」に家族が壁の内側で「密」に集まり、ストレスがピークに達しがちな今の時期は、虐待が起こる条件がそろっている。千葉の当時小4だった栗原心愛さんへの虐待が加速したのも、正月をまたいだ冬休みのことだ。こういった長期間家族が集まる時期には、特に虐待報告件数も急増する。

幾度となく繰り返される悲劇をくい止めるために、国境を超えて「私たちにもできること」がある。フランスの例と絡めてご紹介しよう。

隣の子供の泣き声や大人の怒鳴り声から
目をそらさない「権利」

窓明かりがつく夜の集合住宅。一軒一軒異なる家の窓に画面が切り替わる度に聞こえてくるのは、家族の笑い声などではない。

泣き叫ぶ赤ん坊の声、狂気じみた母親の怒号、一方的に叱りつけドアを蹴破るように閉める音、父親が娘に性的乱暴をしようと小声で命令するような声、親が痛いと叫び続ける子供を何度も何度も殴りつける音。こんな世界の終わりのような音だけが聞こえてくる。
慄然、不快、悲痛、絶望。そんな邪気に汚された家の中でじっと息を殺すように、今この瞬間もなぶりつけられている子供たちがいることを、繰り返し訴えるフランスのテレビCMである。

フランスでは1日に200人の子供たちが身体的虐待を、50人が性的虐待を受け、心理的・身体的・性的虐待は年間5万件も確認されている。また、5日に1人が無惨にも親の手によって殺められている。(2019年4月時点)。一方日本では、児童虐待相談対応件数が約16万件と過去最多の虐待ケース対応数だ(厚生労働省発表2018年度) Photo by iStock

私も目にする機会が多く、強烈な不快感や不安感を覚えると同時に胸が引き裂かれる思いがする。これこそがCMの狙いであり、「危機に瀕した子供」のために「疑わしきは119番へ」と誘導している。観る度に、「もしもそういう子供に気付いたら絶対に電話をする」と自分に言い聞かせざるを得ない。何故なら、休校・休職・テレワーク・失業などのために一日中親子が嫌でも家に留まらなければならないロックダウン期間は、虐待をする親と子供の孤立を招く機会ともなり、それをとめられるのは学校でもケースワーカーでもない、「隣人」の立場にある「全国民」だからだ。そしてこれを相談・通報する「権利」と呼べば、隣人である誰もが物怖じせず電話をかけられるに違いない。