日本の学校も海外にあわせて9月開始にしてはどうか、という議論が始まっている。4月から新生活が始まるはずだった新入生、受験を控えた最終学年のみならず、すべての子どもたちにとって、「学びが始まっていない状況」はとても厳しい。「どうしたらいいか」を真剣に議論することはとても大切だ。ただ、9月開始にするには、変更しなければならないことはあまりにも多い。9月から始めるから失われた学びの時間についてはゆっくり考えよう、となってしまうことは懸念される。入学時期の議論は継続するにせよ、「今」の学びの時間はどうするのか、学費を払っている学生たちの「失われた時間」はどうなるのかなど、真剣に考え、すぐに行動する必要がある。

オランダ在住の倉田直子さんには小学生のお子さんがいる。オランダでは3月半ばから休校要請があってすぐに学校主導の自宅授業が行われ、5月11日には学校が再開される見込みだという。問題点は当然出てくるが、教育を止めないために今出来る最善のことをまず実践し、調整していく姿勢がそこにはあった。

教育格差のまったくない国はない

3月29日に掲載された、オランダの休校スタート時の様子を書いたリポート記事は、多くの方に驚きを持って読んでいただいた。

オランダは、世界の子供の支援や「子供の権利条約」普及に努めるユニセフが数年ごとに先進国の子供を対象としてまとめる「子供の幸福度リポート(CHILD WELL-BEING IN RICH COUNTRIES: A COMPARATIVE OVERVIEW」(最新版2013年)の調査で、「世界一の教育」と認定されている。現地にいるとオランダの小学校のコロナ休校対応が標準のように感じてしまう。けれど前回の記事の反応を見て、やはりオランダの対応は特別なのかもしれないと思いなおした。

ただ、ここでいいたいのは、「教育格差が一切ない国はない」という実感だ。コロナの問題以前にも、オランダでだって「教育格差」はある程度存在した。大切なのは、その上で、出来る限り格差がないようにしつつ教育を止めないための迅速な対策が取れるかどうか、ということなのではないだろうか。

そこで今回は、3月末の記事の後にオランダの政府や学校がどのような追加措置を取り、どのような問題が浮き彫りになったかを書いていきたい。

5月10日まで休校の延期

3月31日、オランダ政府は当初4月6日までだった休校を延長し、5月の休暇(例年4月下旬から5月上旬にかけての休暇)まで学校閉鎖を続けると発表した。それに伴い、小学校は休暇明けの5月10日に再開されることになった。それはつまり、休校中の自宅学習期間も長くなるということでもある。

オランダでは、デジタルデバイスの問題で自宅学習が十分にできない生徒のためのサポートもなされている。前回の記事で「学校からラップトップを貸与された」という例を記述した。

休校要請が政府から出されたその日に学校から全員にメールが届き、デバイスのない家庭には配布する旨と、自宅学習用のテキストを配布するのでイニシャルごとに時間差で学校まで取りに来るように連絡があった。これによって、テキストの膨大なプリントアウトもないままにオンラインを用いた自宅学習がスムースに進んだ 写真提供/倉田直子

けれど学校によってはそういったサポートができないところもある。そういった学校や生徒のために、オランダ国内の様々な財団や基金、自治体が合計1万6千台のラップトップを教育サポート用に寄付していると報道された。またアムステルダム市は、自宅にWiFi環境のない生徒救済のために450世帯に設備サポートを行ったという。国家予算からも、この自宅学習のために追加で250万ユーロ(約2億9千万円)投入された。けれど教育大臣は、前述のような諸々の対応でもまだ不足していると感じている。ちなみにオランダの小学生は2018年のデータによると約151万人で、小学校は約6千7百校だ。

更に取りこぼしがないように、NPO Zappelinというオランダの子供向けチャンネルは、平日の日中に「ラップトップやタブレットを持たない子供たちのための教育番組の提供」を始めた。午前9時半から10時は小学校低学年向け、午前10時から11時は中学年、11時から12時は高学年向けプログラムという具合だ。社会全体で、子供たちの自宅学習を後押ししようとしている姿勢が見て取れる。

また、家庭内暴力と児童虐待のホットラインであるVeilig Thuisには、このコロナ危機の期間は家庭内暴力の通報が1.5倍に増えているという。通常は1日件1000件の子供からの電話が、コロナ休校以降は1日1千5百件に増えた。そういう自宅が安全ではない生徒は、出勤が必要な医療従事者などの子供と同様、日中は学校に来ることが許可されている