「今」にアップデートした「女の子育児」

教育ジャーナリストのおおたとしまささんが2019年9月に刊行した『21世紀の「男の子」の親たちへ』はベストセラーとなった。この度、待望の「女の子編」『21世紀の「女の子」の親たちへ』(祥伝社)が刊行される。「男の子」編と同様、女子校の名門の先生方に話を聞いた上で、おおたさんが「今」にアップデートした「女の子育児」についてまとめている一冊だ。登場する先生方は桜蔭、鴎友、吉祥女子、神戸女学院、四天王寺、品川女子、女子学院、洗足学園、豊島岡女子、ノートルダム清心、雙葉と、日本を代表する名門校の教諭ばかりだ。

発売を記念して本書より特別抜粋掲載する第1回は、無自覚のうちに差別につながっているかもしれないジェンダーバイアスについてお届けする。新型コロナの今、休校で子どもたちと向き合う時間が多くなっている家庭は多いことだろう。娘とうまくいかないと悩む前に、おおたさんが教師たちの実体験から聞いてきた言葉がヒントとなるのではないか。親として自分の価値感を押し付けていないか、一個人としてきちんと認めているかを見つめ直す機会になるのではないだろうか。

女子校でも女性の校長は少ない

世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数(図)によれば、日本はますます男女平等な社会から遠ざかっています。「1」に近づくほど男女平等であるとされるこの指数が、前年度の0.662から0.652に下落したのです。このところせっかく上昇傾向にあったのですが、2011〜2013年ごろの水準に逆戻りです。特に政治分野と経済分野において男女の差が大きいのが日本の課題です。

『21世紀の「女の子」の親たちへ』より
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ジェンダー・ギャップ指数を引き合いに出すまでもなく、女子校の先生たちは日本社会におけるジェンダー・ギャップを日々実感していると口をそろえます。
桜蔭中学校・高等学校の齊藤由紀子先生は「東京の私学の理事長・校長の集まりに出席すれば一目瞭然です。『はぁ』とため息が出るくらいに女性が少ない……」と嘆き、神戸女学院中学部・高等学部の部長・林真理子先生(当時)は「うちの学校は、自立した女性を育むという理念のもとに創立して145年目になりますが、女性の校長は、初期のアメリカ人宣教師を除くと、私でやっと2人目なんです。兵庫県には52の私学がありますが、女性の校長は一桁ですよ」と苦笑い。

「2007年に初めて女性のドルー・ギルピン・ファウストさんがアメリカ最古の大学であるハーバードの学長に就任したとき、『女性学長』と呼ばれたのに対し『私は学長であって女性学長ではない』と言い放ったのは象徴的でしたよね」とは洗足学園中学高等学校・校長の宮阪元子先生。ちなみに2019年のアメリカのジェンダー・ギャップ指数は0.724。日本ほどではないにせよ、アメリカも実はそれほど男女平等な社会でないのです。

2007年2月11日、アメリカの名門大学ハーバードで女性として初めて学長に指名されたドルー・ギルビン・ファウスト氏。この就任スピーチで「学長であって『女性学長』ではないと語った」 Photo by Getty Images