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期待の「アビガン」、シミュレーションが予測する「効果と副作用」

パンデミックは長期的な闘いになる
新型コロナウイルス感染症の治療薬として一躍注目を浴びる「アビガン」とはいったいどんな薬なのか?

コンピュータを用いた創薬を専門とする平山令明・東海大学特任教授に、
その働きと予測される効果について解説していただいた。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威をふるっており、その効率的な診断法と有効な治療薬の開発が急務になっています。

日本国内の患者数が比較的まだ少ない状況にあるため、とりあえずこのパンデミックをしのげばよいと思っている人もいるかもしれません。しかし、仮に夏場に落ち着いても、涼しくなった秋以降にぶり返す、それも変異を経てより強力になったウイルスによる第二波のパンデミックが起こる可能性は否定できません。

むしろ年中行事のようになったインフルエンザのように、今後毎年このウイルスによる攻撃を受けるようになると考える方が自然かもしれません。

私たちはそれに備えて、診断法そして治療薬の開発を考えておく必要があります。

期待される新薬「アビガン」

国内で治療薬の候補に挙がっている薬のひとつに「アビガン」があります。この薬の一般名は「ファビピラビル(favipiravir)」で、その化学構造式を図1に示します。

図1 ファビピラビルの化学構造

ファビピラビルは、新型または再興型インフルエンザ・ウィルスに対して開発された薬ですが、まだこれらの感染症に対してこの薬が投与されたことはありませんでした。

つまり、実戦経験がない武器のようなもので、今回初めて実戦に投入されることになります。初戦でいきなり最前線に立たされるのですから、何(暴発するなど)が起こっても不思議ではありません。

ファビピラビルの構造を見て、何となく見たことのあるような顔だと思った人はよく勉強していている人でしょう。じつは、ファビピラビルの構造はDNAやRNAを構成する核酸塩基にとてもよく似ています。

DNAの化学構造

さらに、ファビピラビルはそれ自身では効果がなく、体内に取り込まれた後で、リン酸化され、三リン酸という形になって効果を発揮します。

リン酸化されたファビピラビルは、RNAやDNA中のヌクレオチドと見間違うほど類似しています。

ちなみに、ファビピラビルのように体の中で形を変えて効くようになる薬をプロドラッグとよびます。

ファビピラビル三リン酸

それでは、ファビピラビルはどのようにしてウイルスをやっつけるのでしょうか?