新型コロナ感染拡大による医療崩壊が心配されている。医療崩壊とは、感染患者数がキャパシティを超えたり院内感染が起きたりして他の病気の治療や妊娠・出産といった必須の医療までできなくなることだ。現在、日本の医療現場の方々は、その砦を守るために必死で闘っている。

妊娠・出産に様々な心配の声はあるが、いま早急に考えなければならないことのひとつが「職場での感染におびえる妊婦」への対策だ。出産ジャーナリストの河合蘭さんはニンプスラボと共同で、コロナ禍での妊婦の方々のリアルな声を聞くべく、4月8日から12日にかけて「今、妊婦さんは何に困っている?  新型コロナウイルス感染症アンケート」を行った。

そこの回答によると、産休・休職中ではない働く妊婦731名中、厚労省が経済団体らに促進協力を求めた在宅勤務ができている人は205名(28%)に過ぎなかった。時差通勤はたった1割(11.9%)にとどまる。そして約6割の妊婦(424名、58.0%)が「感染リスクの高い職場環境が心配」と回答したのだ。

短期集中連載「新型コロナと妊婦」第2回は、妊娠している医師に取材、妊婦と子どもをこの状況で守るために必要なことを考える。

「妊娠中の医療従事者を守って」

「医師だって妊娠します。私もその一人です」
高橋美由紀さん(仮名・20代)は、4月中旬、ネット上で署名キャンペーン「妊娠中の医療従事者をCOVID-19から守ってください!http://chng.it/Hv7NwgtgF6)」 を開始し、そう記した。高橋さんは初めての子を妊娠している妊婦で、かつコロナウイルス陽性患者の受け入れも行う病院の救急科に勤務する医師だ。

救急科は一般的に、新型コロナウイルス感染症の検査が陽性になった患者・その疑いの濃い患者を「救急入り口」から受け入れ、診察や検査をして感染病棟への入院を案内することもある科だ。日本では、そんな場所でも妊婦が働いている。

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高橋さんの勤める救急科は規模が大きいため、交通事故、心筋梗塞、脳卒中、肺炎の悪化した人などありとあらゆる重症者を載せた救急車がひっきりなしにやってくる。搬送されてくる重症患者には口からから気管へチューブを入れ、人工呼吸を開始するための「気管挿管」を行うことが多い。医師はのどの奥を覗き込むようにして、患者の呼気から逃がれようのない至近距離からこの操作を行う。今日、医師は診察前患者全員に発熱や息苦しさなどコロナの症状がないかたずねるのが常だが、患者は会話ができるような状態ではなく、意識さえなかったりするのが救急科というもの。

「実際に交通事故で来院された方が、検査で陽性と出た例も出ました。救急科は、やはり感染リスクが高い。でも、マスクなどの個人防護具も少なくなっているので使い回しです」

コロナウイルスの院内感染が発生し救急外来を閉鎖している病院も出てきている。
「現在コロナウイルスの妊娠への影響に関しては、まだ十分なエビデンスがありません。でも、妊娠によって肺の機能は変化し、体の中で必要な酸素量が増加しますし、アビガンなども妊婦には使えません。インフルエンザやSARSなどでは妊娠後期の妊婦に重症化傾向があることが見つかっています」

人への感染が問題になってからとても日が浅いため、妊娠初期の罹患が胎児に及ぼす影響については研究が特に不十分だ。

「垂直感染(胎内感染)については報告によると稀のようですが、完全に否定されているわけではありません。垂直感染を示唆する報告が少ないことは事実ですが、これは『報告が少ないから安全』と受け取るべきではなく、報告の総数が少ないのですから、『まだわからない。注意が必要』と解釈すべきではないでしょうか」