リーマン・ショックのころを思い出してほしい。金融不安によって不動産市況はみるみる悪化していった。住宅評論家の櫻井幸雄氏が言う。
「東京23区のマンション平均価格は'07年に6120万円でしたが、リーマン・ショックを経た'09年には5190万円と1000万円近くも下落しました。人・モノ・カネの動きが全世界で著しく制限されるコロナ・ショックでも、不動産市況が大きなダメージを受けることになるのは必至です」
そもそも人口減少が進む日本では、不動産は「持っているだけでリスク」と考える専門家は多い。
「都心の不動産はこれまで上昇を続けてきましたが、ここがピークと考えられます。都心の一等地ならまだしも、土地は持っているだけで固定資産税がかかってくるし、活用しようにも費用に対して効果が乏しい。使っていない不動産は、早く売ってしまったほうがいい」(ファイナンシャルリサーチ代表・深野康彦氏)
資産として持っている不動産だけではない。自宅を売って老人ホームに引っ越したり、「駅チカ」マンションへの引っ越しを検討している人も多いだろう。下がる一方ならば、急いで売りに出したほうがいいのか?
新型コロナで人の動きがストップするなか、東京五輪の延期が決まり、期待された訪日客は絶望的となった。これが不動産市況を大きく揺さぶる。
「五輪でのインバウンドを見込んで投資してきた新興デベロッパーの中には、このショックに耐えられない企業も出てくるでしょう。資金繰りが悪化した業者は、会社存続のため、持っている土地を一斉に売りに出します。体力のある業者はそれを見越して買い叩いていく。こうして土地の価格は下がっていくのです」(不動産評論家・牧野知弘氏)
それだけではない。今後、コロナ・ショックが長引けば、ホテルや小売業、また中小企業を中心に倒産が相次ぎ、失業者が増え続けることになりかねない。すると、住宅ローンを払えなくなった人が、一斉にマンションを売りに出すことになる。マンション価格にも深刻な影響を及ぼす。
「特に武蔵小杉や豊洲など新興のマンションの集積地では、売りに出してもすぐに買い手が付かないでしょう。売りに出される戸数が増えれば増えるほど、買い手市場になっていき、マンション価格は下落基調を描いていく」(牧野氏)