僕が「インターン半年・目標就職率ゼロ」の大学を作った理由を話そう

情報産業と大学はどう付き合えばいい?
中村 伊知哉, 岡嶋 裕史 プロフィール

やっぱり大学は変わるべき

中村 こうして大学を作っておいてなんですけど、今回のコロナ禍を見てると、大学ってそのうち要らなくなるかもしれないな、って思いました。みんなネットを使って、オンラインで授業をするようになってるからです。

昔ながらの教科書を使った講義をするなら、世界中のもっと別の教材を使ってもいい。だから大学は、これまでのやり方じゃ価値が生み出せなくなってきている。わざわざ大学に入って、みんなで一箇所に集まって勉強する必要がありますか、ということが問われています。

中村伊知哉氏

岡嶋 僕は、大学が強みを発揮していくとしたら、プロデューサー業になるんじゃないかな、と思っています。大学そのものの権威とか機構に価値があるのではなくて、教員個々の能力を伸ばしたり、マーケティングしていったりするようなプロデュース業に軸足を移した方が生き残れると考えています。

コロナ騒動を見ても、大学が「遠隔授業やるよ」って言っても、教育個人に丸投げで、サポートする力量にもインフラにも乏しい。大学の脆弱性が表面化してしまいました。もう権威だけでは食えないというか、権威を裏打ちする実力の大小が可視化されてしまいました。

教員個々の価値をデザインして最大化できる能力のある大学と、そうではない旧態依然とした大学に、二極化がどんどん進んでいくと感じています。

 

一方で、今回のコロナ騒動では、みんな変化せざるを得なくなった。この変化は大事にしたいと思います。コロナの力を借りなければ変われなかったというのは非常に悔しいですけれども。日本って、多数派が困らないと変われない社会デザインなんですよね。

岡嶋裕史氏

岡嶋 中央大学国際情報学部では今年、eスポーツの授業を始めます。本当は体育の代替にしたかったんですけど、それはちょっと無理でした。

でも、大学の授業として取り上げることで、eスポーツが不健全な遊びであるといった通説に一石を投じたいと思っています。

病気や障害がある人も参加できる可能性がありますし、世界的なプレイヤーと同じピッチに立つこともできます。

僕が注目しているのは格差の是正で、たとえば僕はモータースポーツをやるんですけど、あれはお金がかかるんです。「ブラジルの子はお金があるとレーシングカートを、ないとサッカーを始める」とか言われていて。F1なんて、ある程度お金がないと、そもそも目指せないんですよね。

でも、eスポーツで優秀な成績を修めた子が、リアルのフォーミュラレースに出場する機会をつかむなど、状況が変わってきました。こういう可能性を多くの人にもっと知って欲しいんです。

中村 iUもeスポーツには取り組むつもりです。以前僕が設立に携わった超教育協会という組織をベースに、eスポーツ超学校を作ります。

シラバスをこなすと、プレイヤーが向いているのか、プロデューサーが向いているのか、ゲームクリエイターが向いているのか……みたいなことが分かるようにカリキュラムを組みます。授業には、プロeスポーツ選手も呼んできます。

ブラックボックスのなかみは?

岡嶋 eスポーツは大事な取り組みだと思います。情報教育もそうですが、社会を構成する重要な要素になり得ますし、そうなるべきだと考えています。

一方で、スポーツや教育を情報化することに抵抗のある人たちもたくさんいました。理由はさまざまですが、その一つはITのしくみがブラックボックスに見えることだと思います。

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