iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長・中村伊知哉氏

僕が「インターン半年・目標就職率ゼロ」の大学を作った理由を話そう

情報産業と大学はどう付き合えばいい?
中央大学国際情報学部にて学部長補佐を務める岡嶋裕史教授と、今年4月にiU(情報経営イノベーション専門職大学)の学長として舵を切った中村伊知哉氏による大型対談。

緊急事態宣言の直前、否応なく変化を迫られる学校教育を、2人はどう見ていたのか?
そして、この「コロナ禍」の後、大学教育はどう変わるべきなのか?
時代の潮流の最先端で、大学と情報産業の行く末を2人が語る!

「全学産学連携」という挑戦

岡嶋 情報産業は移り変わりが激しく、ぼう大な知識量を求められる分野です。だからこそ、教育機関である大学と情報産業界はどう関わっていくべきか考えるのは、とても重要だと思います。

このタイミングで開学をされた情報経営イノベーション専門職大学(iU)の学長である中村先生に、ぜひお考えをうかがいたいと思います。

岡嶋裕史氏(右)と中村伊知哉氏(緊急事態宣言の前に収録)

中村 私は以前スタンフォード大学にいて、その後は慶應義塾大学に12年ほどいました。日米の大学を比べたときに、これからの日本の情報産業の課題は、大学との関わり方だろうと思っていました。

アメリカでは、優秀な情報産業はみんな大学から出てきている。大学が色んなものを考え出す工場、増殖炉みたいになっているんです。

でも、日本はそうではない。日本からは、ファミコンや初音ミクなど素晴らしいものができたけど、ここに大学は関わってこなかった。基盤がしっかりしている大学って、新しいことはなかなかやらせてもらえないんですね。

それはそれでいい面はあるんだけど、新しいことをやるならゼロからでないと難しいなと思っていて。そんなときに、「全学産学連携」のプランを描いたところ、ソレやろうじゃないか、という声が出てきたんです。

タイミング的にも専門職大学という新しい制度でやれたのは大きいです。全員がインターンに行くようなことは、新制度でなければできなかった。

岡嶋 僕も、初音ミクとか大好きなんです。で、たとえばMMD(Miku Miku Dance:初音ミクのモーションを作成する3DCGウェア)のソフトウェアってもう開発が止まっているんですよね。そろそろバージョンアップやソフトウェア保守をしないといけない時期です。

何か貢献できないかと探ったのですが、大学としてはなかなか関われないんです。必要性や理念には共感してもらえるんですけど……。

結局最後に協働できるのはメディア企業だったり出版社だったりなので、悔しい思いはありますね。ひょっとしたら、一部の人に眉をひそめられるかもしれないテーマでも、産学連携ができればいい成果が出て、社会に貢献できると思うのですが。

中村 たとえば、産学連携の中で発足したradiko(ラジコ)は、僕らの実験だったんです。

radikoはスマホ向けにラジオを配信するサービスですが、放送局がそういうことをやろうと思っても、なかなか身動きが取りづらい。じゃあ、大学の実験としてなら許されるんじゃないのって思ったのがきっかけです。

radikoを聴いた若い世代は、ラジオを知らなかったんですよね。その若い世代に圧倒的に支持を受けたから、産業界も動き出した。こうした動かし方はもっとできるんじゃないか、という思いが、今回の大学づくりにつながっていきます。

案外、産業界はこういう活動を待ち望んでいたようでした。「学生全員インターン、全員起業、産学連携、教員の8割は産業界から来ます」……そんな大学を作ろうということで呼びかけたら、その日のうちに一緒にやりしょうという会社が出てきたくらいです。

他には、学校教育に携わっている人たちのために、「世界オタク研究所」というのを作ってみました。アニメとか漫画とか、オタクみたいことを何かやりたい人って世界にいっぱいいるじゃないですか。大学の教員も含めて。

 

岡嶋 素晴らしい研究所ですね(笑)。

中村 オタク系のイベントって、世界にあるじゃないですか。Japan Expoとか。世界的な日本のコンテンツ好きの集まるイベントって、年間2000万人とか動員しますよね。

ところが、日本の人は全然そのイベントを知らないし、仕切れてもいない。じゃあ誰がそれを主催しているんだろうと思って調べてみたら、けっこう大学も多かったんです。MITとか北京大学とか。主催者も、そうそうたる人たちがいる。

それならここも産学連携して、新しい組織を作ろうと思ったのが、「世界オタク研究所」のきっかけなんです。