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コロナショックでロシアが直面する「厳しすぎる現実」

原油価格下落、経済低迷、国際的孤立

20年前に逆戻り

今から20年前の2000年5月。ロシアを限りない混乱と困窮に叩き込んだ大統領エリツィンに政権を禅譲されたプーチンが大統領に就任、出身の旧KGBを力の基盤に、ソ連の復活にとりかかった。

当時のロシアは、多額の国債を外国人に売っては、繁栄の前借りをする国家モデルが破綻、1998年8月にデフォルトを宣言して通貨ルーブルを6分の1に引き下げた、惨劇からまだ2年。1999年のGDPはドル換算で僅か2100億ドルに落ち、国営企業での給料は何カ月もの遅配が常態、企業間の決済も滞ってバーター取引が幅を利かすという状況にあった。

そして今。ロシアは想定外のコロナ騒ぎとそれに伴う原油価格の惨めな下落で、20年前に逆戻りしかねない窮状に追い込まれている。1999年に1バレル17.8ドル(ブレント)だった原油価格は2008年には97.8ドルと約4.5倍に跳ね上がり、その間GDPの8.5倍増というロシア経済の奇跡を実現した。

プーチンはそれに乗って、ロシアの繁栄と威信(ついでに締め付けと保守化も)の回復を演出。当時モスクワのタクシー運転手は、「プーチン様様。でも、彼がうまくやっているのは石油のおかげであることは、みんな知ってる。あれなら誰がやってもうまくいくさ」と筆者に言っていたものだ。

そして現在の原油価格(ブレント)は20ドル強。まさに2000年当時のものに逆戻りした。プーチンは元の木阿弥で、ロシア中興の祖として歴史に残ることはもうないだろう。

原油価格の一時的リバウンドはあり得るが、環境問題もあって「石油はもう過去のもの。石油では儲からない」と西側メジャーが考え始めれば、石油は水素等の新エネルギー源に駆逐されて、もう戻って来ないかもしれない。

ロシアは2000年以降、カネを溜め膨らましているから、1999年の1人当たりGDP1430ドル(年)というような貧困国に直ちに落下するわけではないが(2019年は11162ドル)、生産財、消費財の多くを輸入に頼っているので、ジリ貧が確実。インフレも再び激化して、長期低迷することだろう。

そしてそれは、これからの国際情勢、日本や西側諸国の対ロ関係をかなり変えていくだろう。ロシアは、この数年の米国の引きこもり症状に乗じての、いけいけどんどんの外交とはおさらばだ。

そして国内では、これまで「他に替わる人材がいない」と言われていたプーチンはいとも簡単に捨てられて、「彼でなければ誰でもいい」ということになりかねない。

 

それだけならば、今の日本と大差はないが、ロシアの場合うまく仕切らないと、プーチン後をめぐっての死闘が展開され、度を超すと、中央の権力が真空化、ロシアの古い持病である地方の離間、独立化性向が頭をもたげる、ということになりかねない。今ロシアが直面する危機のマグニチュードは、それほどのものである。