芸術大国でもアーティストに広がる不安

ルイはミュージシャンで生計を立てているが、コロナ下でいま、どのような状況にあるのだろうか。

「このロックダウンの状況下で、今年夏から秋にかけて開催されるミュージック・フェスティバル、コンサートやツアーが全てキャンセルになってしまった。本来なら9月は僕のバンドは韓国、中国、日本へアジアツアーに行く予定だった。このまま政府がアーティストを支援する制度を打ち出さないと、僕を含むミュージシャンたちは生活に困ってしまう」

パリの老舗音楽ホールであるオリンピアホールの看板には「Restez chez vous(家にいよう)」というメッセージが〔PHOTO〕Getty Images

でも、フランスは3月15日に、従業員10人以下の小規模企業、個人事業主、フリーランスを対象に最大1500ユーロ(約18万円)の定額支援を決定しているし、音楽業界には約12億円の支援金が拠出されていると聞くが……

「1500ユーロは、アンテルミタン・デュ・スペクタクルの制度を使えないアーティストのための補償で、僕のようにミュージシャン・ライセンスを持っている人は対象じゃないんだよ」

ルイによると、フランスには映画、音楽、演劇などの関係者に対する保証制度「アンテルミタン・デュ・スペクタクル 」というものがあるらしい。その制度下にはミュージシャン・ライセンスがあり、ツアーやライブがない時期も失業保険の収入が保障されるそうだ。ただし、このミュージシャン・ライセンスを保持するためには、1週間に1回以上のコンサートを1年間演奏することが義務づけられており、毎年更新しなければいけない。

「僕は今、ミュージシャン・ライセンスを持っているので失業保険が支払われているけれど、今年は義務付けられているコンサート数がこなせないから、来年のライセンスが更新できない。だから、アンテルミタン・デュ・スペクタクルの制度を使っている人達はみんな不安を抱えている。

それに、音楽業界に対する支援金は、劇場と長期的な契約をしているミュージシャン、例えば、クラシック音楽の楽団員などが対象だと聞いている。とにかく、僕の周りのミュージシャンで政府から補償金をもらっている人はいないし、『政府が休業補償してくれるだろうから安心して家に引き篭り、創作に励む』なんて気楽に考えている人はいないね」